企業法務弁護士の転職事情

就職先の法律事務所を選ぶ際に将来転職できるかを不安に思う方もいるでしょうし、現在進行形で転職を検討中の方もいると思います。

しかし、弁護士の転職についての情報はあまり出回っていません。

 

そこで、今回は、企業法務弁護士の転職事情について書きたいと思います。

 

1 企業法務弁護士は転職できるのか?

 

割と簡単にできます。

主な転職先は、企業内弁護士と他の法律事務所の2つです。

弁護士資格を使わない職種に転職する人もたまにいますが、いまのところ一般的ではありません。

 

大手事務所から中・小規模事務所への転職は頻繁にありますし、近年は大手事務所が拡大傾向にあったので、中・小規模事務所から大手事務所への転職も少なくありませんでした。

 

企業内弁護士から法律事務所への転職はあまり多くありませんが、「法律事務所⇒企業内弁護士⇒法律事務所」という転職であれば難しくないと思います。

 

2 転職活動の方法

 

転職エージェントを利用する方法と自分で応募する方法があります。

 

転職エージェントは、どの法律事務所や企業が中途採用活動を行っているのか、それがどのような条件なのかといった情報を有しています。

また、転職エージェントは、レジュメの作成や採用者側との事務連絡を行ってくれます。

そのため、すでに転職先とのコネを有しているなどの事情がないのであれば、自分で応募するよりも転職エージェントを利用した方が便利だと思います。

 

なお、転職エージェントへの報酬は採用する側が支払うのが通常ですので、費用の心配をする必要はありません。

ただ、転職エージェントへの報酬は結構高いので(転職者の想定年収の3割など)、採用する側としては自分で応募してきてもらった方がありがたいです(笑)

 

3 転職のタイミング

 

よくある転職のタイミングは、弁護士1~3年目と、弁護士6~10年目です。

 

10年以上の経験を有する弁護士が転職することももちろんありますが、それ以前と比べると、すでに法律事務所の経営者側になっている、年齢が高くなっており中途採用しづらいなどの理由により、流動性は低くなります。

 

⑴ 弁護士1~3年目の場合

 

弁護士1~3年目の場合、企業でいうところの第二新卒に当たると思います。

この頃の弁護士の転職先は、企業よりも他の法律事務所が一般的だと思います(理由は後で書きます)。

 

法律事務所や企業がこの頃の弁護士を中途採用する主な理由は、

 

  • 新人を採用するよりコスパがいいこと
  • その年次の弁護士が不足していること

 

の2つです。

 

新人教育にかかるコストは馬鹿になりません。いくら学生時代に優秀だった人でも、仕事を始めたばかりの頃は、戦力にならないどころか足手まといになるのが普通です。

しかし、企業法務系の事務所で働いていた人であれば、すでに仕事の進め方や企業法務に関する初歩的な知識を身に着けており、教育に労力をかけずとも戦力になる可能性が高くなります。

そのため、一般的に、経験を有する弁護士を中途採用することは、新人弁護士を採用するよりもコスパがいいのです。

 

また、法律事務所も新人の採用活動を行うのが一般的ですが、毎年いい新人を採用できるとは限りません。

いい新人を採用できたとしても、何らかの事情でその新人が辞めてしまうこともあります。

さらに、業務量の増加により人手が足りなくなることもあります。

このような場合、法律事務所は、足りない年次の弁護士を中途採用することがあります。

 

以上のような事情から、転職市場において、企業法務系の事務所で働いていた弁護士の需要は小さくありません。中途採用しか行っていない法律事務所もあるぐらいです。新卒時には入れなかった事務所に、転職であれば入れるということもあります。

 

ただし、新人採用が上手くいかなかった場合や採用した弁護士が辞めてしまった場合の「穴」は、中途採用により順次埋まっていきます。

また、他の事務所で長年働いていた弁護士の場合、採用する側の法律事務所とは異なる働き方を身に着けているなどの理由により、中途採用したとしても上手く機能しない可能性があります。

 

そのため、「第二新卒」枠での中途採用の場合、他の事務所での経験を4年以上有する弁護士は、対象から外れることが多くなります。

 

人員不足の「穴」が順次埋まっていくことを考えると、第二新卒での転職を狙うなら早く活動し始めた方が有利だと思います。

 

⑵ 弁護士6~10年目の場合

 

弁護士6~10年目の場合、他の法律事務所への転職に加えて、企業への転職も多くなります。

 

この頃の弁護士が転職する場合には、

 

  • 弁護士として一人前に業務をこなせる能力
  • ある程度の専門性

 

が求められるようになります。そのような能力が欠けているのであれば、もっと若い弁護士を採用して教育した方がいいからです。

 

また、企業が法律事務所での勤務経験を有する弁護士を中途採用する主な目的は、①基本的な法律問題を社内で解決できるようにすること、②特定の法律分野の担当者を獲得すること、および③外部に依頼する際に適切な法律事務所または弁護士を選べるようにすることの3つだと思います。

 

そのため、企業の場合には、若い弁護士よりも経験豊富な弁護士を中途採用する傾向にあります。これが、1~3年目の弁護士の場合に企業への転職が少ない理由です。

 

近年は企業に求められる法的な知識のレベルが上がってきており、企業は企業内弁護士を積極的に採用しています。企業内弁護士の数はすでにかなり増えましたが、まだしばらくは増え続けるでしょう。

そのため、少なくとも今後数年間は、企業への転職もそれほど難しくないのではないかと思います。

 

なお、弁護士の転職については以下のような本も出ていますので、参考になるかもしれません。