「女帝 小池百合子」が全然おススメできない理由

最近、小池百合子さんの学歴詐称疑惑(本当はカイロ大学を卒業していないのではないかという疑惑)が話題になっており、その疑惑について触れた「女帝 小池百合子なる本が、アマゾンでベストセラーになっていました。

 

  

さて、まず書いておきたいのですが、私は、政治家としての小池さんを全く評価していません。

豊洲市場への移転のときは多額の税金を無駄にしたように思われますし、築地に市場機能を戻す旨の発言はいつのまにか撤回されてしまったようですし、「7つのゼロ」という公約を真剣に実現しようとしているのかも疑問です。

 

やたらと横文字を並べてメディアに出まくるところが若干鼻につくというのも正直あります(笑)

 

そんなアンチ小池の私としては、「ベストセラーになるぐらいだから小池さんを鋭く批判する本に違いない」と期待して「女帝 小池百合子」を読んでみました。

 

しかし、残念ながら全くの期待外れでした。

 

なぜかというと、

  1.  小池さんの両親やプライベートに関する悪口が長々と書いてあって、「それ政治と関係ないんじゃない?」と思った
  2. 批判の多くが証言や過去の週刊誌記事に基づいており、信用性に疑問がある
  3. 筆者による事実の評価や表現方法が一方的すぎて、読んでいて不快になった

 からです。

 

都知事選間近に出版されたことからしても、小池さんを批判するという目的が先にあって、そのための材料を後から集めた本なんじゃないかと思います。

 

単なるゴシップ本として読むのであれば、そこそこ面白いのかもしれません。しかし、アマゾンでのレビューがあそこまで高評価になるのは正直不思議です(関係者によるレビューがかなり含まれているのではないかなぁと疑ってしまうほどです)。

 

以下、少し詳しく書いてみたいと思います。

 

1 小池さんの両親やプライベートに関する悪口が長々と書いてある

 

本書においては、小池さんのプライベートな事項への悪口にかなりの紙面が割かれています。

 

例えば、以下のような具合です。

 

  • 小池氏は芦屋出身だから見栄っ張りになったのだろう
  • 小池氏の父は「詐欺師」「山師」「政治ゴロ」と忌み嫌われている
  • 小池氏の両親は、他人のお店を勝手に自分のものにしてしまった
  • 顔に赤いあざがあるため、小池氏はコンプレックスの塊である
  • 従妹が美人だったから、小池氏はコンプレックスを抱えている
  • 小池氏はエジプトで日本人留学生と結婚し、利用するだけ利用して離婚した
  • 小池氏と付き合っていた東大助教授はあっさり小池を捨てて、ずっと年下のお嬢様学校を卒業した女性を妻に選んだ。

 

しかし、両親に関する悪評やプライベートな事項は、小池さん本人の政治的手腕とは関係がないと思うのです。政治家を批判する本なのですから、政治的手腕と関係のある事項について、淡々と書いてくれればよかったのにと思います。

 

「あざがある⇒コンプレックスの塊である」などの評価が一方的すぎるんじゃないかという点も、以下で述べるとおりです。

 

2 批判の多くが証言や過去の週刊誌記事に基づいている

 

「女帝 小池百合子」における小池さんへの批判は、ほとんどが第三者の証言や過去の週刊誌記事に基づいています。

 

例えば、

・「小池を知る、ある人物に話を聞いた時のことだ」

・「遠縁の男性が当時を振り返る」

・「小池の同級生が、当時の思い出を語ってくれた」

・「勇二郎(※小池さんの父親)を知る元大手石油会社の男性は笑いながら、こう教えてくれた」

・「週刊ポストが写真入りで報じている」

 

といった具合です。

 

証言を用いること自体は、仕方がないと思います。しかし、証言が真実であるとは限りません。

 

証言は、知覚⇒記憶⇒叙述という過程を経るものであり、その過程において誤りが入り込む可能性があります。見間違い、聞き間違い、記憶違い、言い間違いなどです。また、証言者が意図的に虚偽の証言をする可能性もあります。そのため、一般的に、証言は客観的証拠に比べて信用性が低いものと考えられています。証言が匿名であればなおさらです。

 

週刊誌の記事であれば、情報源の信用性の問題に加えて記事自体の信用性の問題もありますので、さらに信用性が低くなります。

 

それにもかかわらず、筆者は引用した証言や記事がすべて正しいことを前提にしているようです。また、小池さんの有利になるような証言や記事もたくさんあると思いますが、それは取り上げていません。

 

本書のキモである小池さんの学歴詐称疑惑についても、メインの根拠は、エジプト留学時代に小池さんのルームメイトであったとされる女性の証言です。しかし、上記のとおり、その女性の証言が真実であるとは限りません。その女性が見間違い、聞き間違い、記憶違い、言い間違いをしている可能性もありますし、意図的に虚偽の証言をしている可能性だって否定できません。

ルームメイトであったのは数十年前のことというのですから、なおさら信用性は低くなります。

 

そして、本書のなかで、カイロ大学は小池さんが卒業したことを認めていると書かれています。また、本書の出版後には、カイロ大学から小池さんが卒業したことを認める旨の声明が改めて出されました。

このように、小池さんが卒業したことを大学自体が認めているという反対の強力な証拠がある以上、大学が嘘をついていることを強く疑わせる具体的な事情がない限り、小池さんが学歴を詐称していると断じることはできないはずです。

上記のような女性の証言と大学の声明では、大学の声明の信用性の方が高いと考えるのが自然です(少なくとも、裁判であればそう判断される可能性がかなり高いです)。

 

それにもかかわらず、筆者は上記の女性の証言を主な根拠にして、小池さんが学歴を詐称しているとほぼ断定したうえで、それを前提にして小池さんの批判を繰り返します。

 

筆者は、エジプトでは問題をお金で解決できる、小池氏が中東に影響力を有している等の抽象的な根拠により「カイロ大学の発言は嘘」としていますが、そんな抽象的な根拠だけで嘘と断じられたのでは、カイロ大学もエジプトもたまったものではないでしょう。

仮に東京大学がある人物の卒業を認めた場合に、外国人が「それは嘘だ」と主張してきたとしたら、特に関係のない私ですらイラっとします。

 

3 筆者による事実の評価や表現方法が一方的すぎる

 

全体をとおして、筆者による事実の評価やその他の表現方法は、かなり一方的です。悪意に満ちているとすら思えてしまいます。

 

例えば、本書においては、小池さんが中東の要人の通訳を務めたという事実がいくつか記載されています。このような客観的事実があった場合、もし小池さんがアラビア語を話せないのであれば、通訳に問題が生じたはずです。しかし、そのような問題が生じたという事実は本書中には記載されていません。

そのため、仮に「小池氏はアラビア語をあまり話せないはずだ」という第三者の証言があったとしても、上記事実から、「小池氏は通訳をできるぐらいにはアラビア語を話せるのだ」という評価になるのが自然だと思います。それにもかかわらず、筆者は、「たいしてアラビア語を話せないのに通訳を引き受けるとはずうずうしい奴だ」といったように評価しています。

 

また、小池さんの生い立ちや容姿を根拠に、コンプレックスを抱えているとか、それが上昇志向のきっかけになっているとかいうのも、一方的だなぁと思います。人生はいろいろあって、この本に書かれていない出来事の方がはるかに多いのですから、外見的な事項だけで小池氏の人となりを判断するのは不可能でしょう。

 

さらに、筆者は小池さん自身から聞いたわけでもないのに、

  • 「小池はフランスでの会議に『喜んで』出かけていった。」
  • 「彼女は英語を口にするとき、『幸福感と優越感に浸る』」
  • 「小池は…自分を封じる『安倍への恨みを深くした』」
  • 「もちろんこれは『建前であって、本心ではなかった』」
  • 「小池本人は、『これを極めて表面的に受け取ってしまう』」

などといったように、小池さんの内心をネガティブな方向で断定しています。そんなこと筆者にはわからないはずなのに。

 

挙げるときりがないのですが、ほかにも、小池さんの同級生とされる人の「アザのことなんか、まったく気にしていないし、それで百合子ちゃんをいじめるような子もいなかった。百合子ちゃんはすごく前向きだった」という証言について、

筆者は、「この言葉を聞いた時、私は小池がいかに孤独な状況にあったかを察した。アザをまったく気にしていない。そんなことがあるだろうか。気にしていないように振舞っていただけだろう」と述べています。

これを読んで私は、いやいや、アザを気にしていない可能性だって全然あるし、仮に気にしていたのだとしても、それをもって「孤独な状況」にはならないでしょ!と思いました。

 

とにかく、全体をとおしてこんな具合で、何でも小池さんの悪口に繋げる筆者の姿勢は読んでいて不快でした。

 

4 まとめ

 

「女帝 小池百合子

 

  • 主観的・抽象的な根拠が多く、政治家としての小池さんを批判する本としてはイマイチ
  • 無理やり批判に繋げる筆者の姿勢は不快
  • ゴシップ本として読むなら楽しめるかもしれない

 

という本でした。全然おススメできません。アンチ小池の私ですらこのように感じたので、小池ファンの人はなおさら読まない方がいいと思います(笑)

企業法務弁護士の転職事情

就職先の法律事務所を選ぶ際に将来転職できるかを不安に思う方もいるでしょうし、現在進行形で転職を検討中の方もいると思います。

しかし、弁護士の転職についての情報はあまり出回っていません。

 

そこで、今回は、企業法務弁護士の転職事情について書きたいと思います。

 

1 企業法務弁護士は転職できるのか?

 

割と簡単にできます。

主な転職先は、企業内弁護士と他の法律事務所の2つです。

弁護士資格を使わない職種に転職する人もたまにいますが、いまのところ一般的ではありません。

 

大手事務所から中・小規模事務所への転職は頻繁にありますし、近年は大手事務所が拡大傾向にあったので、中・小規模事務所から大手事務所への転職も少なくありませんでした。

 

企業内弁護士から法律事務所への転職はあまり多くありませんが、「法律事務所⇒企業内弁護士⇒法律事務所」という転職であれば難しくないと思います。

 

2 転職活動の方法

 

転職エージェントを利用する方法と自分で応募する方法があります。

 

転職エージェントは、どの法律事務所や企業が中途採用活動を行っているのか、それがどのような条件なのかといった情報を有しています。

また、転職エージェントは、レジュメの作成や採用者側との事務連絡を行ってくれます。

そのため、すでに転職先とのコネを有しているなどの事情がないのであれば、自分で応募するよりも転職エージェントを利用した方が便利だと思います。

 

なお、転職エージェントへの報酬は採用する側が支払うのが通常ですので、費用の心配をする必要はありません。

ただ、転職エージェントへの報酬は結構高いので(転職者の想定年収の3割など)、採用する側としては自分で応募してきてもらった方がありがたいです(笑)

 

3 転職のタイミング

 

よくある転職のタイミングは、弁護士1~3年目と、弁護士6~10年目です。

 

10年以上の経験を有する弁護士が転職することももちろんありますが、それ以前と比べると、すでに法律事務所の経営者側になっている、年齢が高くなっており中途採用しづらいなどの理由により、流動性は低くなります。

 

⑴ 弁護士1~3年目の場合

 

弁護士1~3年目の場合、企業でいうところの第二新卒に当たると思います。

この頃の弁護士の転職先は、企業よりも他の法律事務所が一般的だと思います(理由は後で書きます)。

 

法律事務所や企業がこの頃の弁護士を中途採用する主な理由は、

 

  • 新人を採用するよりコスパがいいこと
  • その年次の弁護士が不足していること

 

の2つです。

 

新人教育にかかるコストは馬鹿になりません。いくら学生時代に優秀だった人でも、仕事を始めたばかりの頃は、戦力にならないどころか足手まといになるのが普通です。

しかし、企業法務系の事務所で働いていた人であれば、すでに仕事の進め方や企業法務に関する初歩的な知識を身に着けており、教育に労力をかけずとも戦力になる可能性が高くなります。

そのため、一般的に、経験を有する弁護士を中途採用することは、新人弁護士を採用するよりもコスパがいいのです。

 

また、法律事務所も新人の採用活動を行うのが一般的ですが、毎年いい新人を採用できるとは限りません。

いい新人を採用できたとしても、何らかの事情でその新人が辞めてしまうこともあります。

さらに、業務量の増加により人手が足りなくなることもあります。

このような場合、法律事務所は、足りない年次の弁護士を中途採用することがあります。

 

以上のような事情から、転職市場において、企業法務系の事務所で働いていた弁護士の需要は小さくありません。中途採用しか行っていない法律事務所もあるぐらいです。新卒時には入れなかった事務所に、転職であれば入れるということもあります。

 

ただし、新人採用が上手くいかなかった場合や採用した弁護士が辞めてしまった場合の「穴」は、中途採用により順次埋まっていきます。

また、他の事務所で長年働いていた弁護士の場合、採用する側の法律事務所とは異なる働き方を身に着けているなどの理由により、中途採用したとしても上手く機能しない可能性があります。

 

そのため、「第二新卒」枠での中途採用の場合、他の事務所での経験を4年以上有する弁護士は、対象から外れることが多くなります。

 

人員不足の「穴」が順次埋まっていくことを考えると、第二新卒での転職を狙うなら早く活動し始めた方が有利だと思います。

 

⑵ 弁護士6~10年目の場合

 

弁護士6~10年目の場合、他の法律事務所への転職に加えて、企業への転職も多くなります。

 

この頃の弁護士が転職する場合には、

 

  • 弁護士として一人前に業務をこなせる能力
  • ある程度の専門性

 

が求められるようになります。そのような能力が欠けているのであれば、もっと若い弁護士を採用して教育した方がいいからです。

 

また、企業が法律事務所での勤務経験を有する弁護士を中途採用する主な目的は、①基本的な法律問題を社内で解決できるようにすること、②特定の法律分野の担当者を獲得すること、および③外部に依頼する際に適切な法律事務所または弁護士を選べるようにすることの3つだと思います。

 

そのため、企業の場合には、若い弁護士よりも経験豊富な弁護士を中途採用する傾向にあります。これが、1~3年目の弁護士の場合に企業への転職が少ない理由です。

 

近年は企業に求められる法的な知識のレベルが上がってきており、企業は企業内弁護士を積極的に採用しています。企業内弁護士の数はすでにかなり増えましたが、まだしばらくは増え続けるでしょう。

そのため、少なくとも今後数年間は、企業への転職もそれほど難しくないのではないかと思います。

 

なお、弁護士の転職については以下のような本も出ていますので、参考になるかもしれません。

マスクの転売でついに逮捕者が!

2020年6月1日に、マスクの転売による初の逮捕者が出ました。

 

「マスク1万6000枚転売の疑い 高松の会社社長を逮捕 全国初」(NHK News Web)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200601/k10012454001000.html

 

マスク1万6000枚を1枚当たり約5円上乗せした価格で転売した容疑とのことですが、このニュースに対し、

 

・「たった5円上乗せしただけで逮捕されちゃうの?」

・「これぐらいは不当な高額転売には当たらないんじゃない?」

 

といった意見が散見されました。

 

しかし、大まかにいうと、法令は以下のようなマスクの転売を禁止しています。

 

  1. スーパー、ドラッグストア、ネット通販など、相手を選ばずに販売している人から購入したマスクを、
  2. 不特定または多数の人に対して、
  3. 購入時より少しでも高い値段で売却する行為

 

そのため、仮に1枚当たり5円しか上乗せしていないとしても、相手を選ばずに販売している人からマスクを購入し、そのマスクを不特定または多数の人に対し売却したのであれば、法令に違反することになるわけです。

 

そして、今回逮捕されたのはクリーニング会社の役員で、輸入販売業者から購入したマスクを販売していたということですが、通常、輸入販売業者がクリーニング会社の役員を個別に選んでマスクを販売することはありません。そのため、この輸入販売業者は、相手を選ばずに誰彼構わずマスクを販売していたのでしょう。

 

したがって、今回の行為は法令に違反する可能性が高いため、手続的な違反がない限り、逮捕に問題はないと考えられます。

 

なお、スーパーやドラッグストアなどが、通常の取引ルートでマスクを仕入れて販売している場合、仕入先は相手を選んで販売している業者(卸売業者など)であることが通常なので、法令には違反しません。法令は、普通の小売業者まで法令に違反することになってしまわないよう、きちんと配慮しているのです。

 

以下、ご参考までに詳しく記載しておきます。

 

1 どの法律でマスクの転売が禁止されているのか?

 

マスクの転売は、「国民生活緊急措置法」と「国民生活安定緊急措置法施行令」によって、2020年3月15日から禁止されています

 

コロナ禍でマスクの不足や転売が社会問題になったことをうけて、政府は施行令を改正し、マスクの転売を禁止しました。

 

これに違反してマスクを転売した場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方を課されるおそれがあります

 

2 どれぐらいの利益を上乗せすると違反になるのか?

 

禁止されているのは、「購入価格を超える価格」でマスクを転売する行為です。つまり、購入価格よりも0.1円でも高く転売すれば、法令に違反することになります。

 

「購入価格」には、消費税や送料等を含みます。そのため、例えば、購入価格が1000円(消費税80円)で、購入時に送料として100円を支払った場合には、1180円以内で転売すれば、法令には違反しないことになります。

 

転売時については、転売価格と送料等の合計額が「購入価格」を超える場合であっても、転売価格が「購入価格」以下であり、かつ、送料等が一般的な範囲の金額である限り、法令には違反しません。しかし、送料等が一般的な金額に比べて明らかに過大であるときは、法令に違反します(厚生省ほか『国民生活安定緊急措置法による転売規制についてのQ&A』Q5-6)。

 

3 禁止されるマスクの「転売」とは?

 

禁止されるマスクの「転売」とは、「不特定の相手方に対し売り渡す者」から購入したマスクを、不特定または多数の人に対して販売する行為のことをいいます。

要するに、スーパー、ドラッグストア、ネット通販など、相手を選ばずに販売している人からマスクを購入し、それを不特定多数の人に販売する行為が「転売」に当たるということです。

 

そして、小売業者や卸売業者などが、通常の商取引において製造業者や輸入業者から仕入れたマスクを販売する行為は、「転売」には当たらず、規制の対象外です

なぜなら、通常の商取引では、製造業者や輸入業者は、相手方を特定して製品の販売を行っていると考えられるからです(上記Q&AのQ4-1参照)。

 

ただし、製造業者や輸入事業者が相手を選ばずにマスクを販売していた場合(ネットで売っていた場合や誰彼構わず声をかけて売っていた場合など)には、そこから仕入れたマスクを不特定多数の人に販売する行為は「転売」に当たり、規制対象となります(上記Q&AのQ4-1およびQ4-3参照)。

大手法律事務所への就活事情

法律事務所には、ざっくりと分けると以下のような種類があります。

 

  1. 大手法律事務所(五大法律事務所)
  2. 中規模・準大手の企業法務系法律事務所(弁護士が数十人~150人程度)
  3. ブティック系法律事務所(特定の分野に強い小・中規模の企業法務系法律事務所)
  4. 外資系法律事務所
  5. 新興形の中・大規模法律事務所
  6. 小・中規模の一般民事系法律事務所

 

私は1に所属していたことがありますし、現在は2に所属しています。そこで、今回はそれらの就活事情について書いてみたいと思います。

 (なお、「Lawyer’s INFO」という法律事務所に関する口コミ投稿サイトもあるので、ご覧いただくと面白いかもしれません)

 

1 就活の時期

 

五大法律事務所の採用活動は、司法試験が終了してすぐに始まり、それから1か月間程度で終わるのが通常です。

 

例年であれば、司法試験が5月中旬に実施され、5月下旬から応募と個別面接が始まり、7月初旬にはすべての面接が終了します。

司法試験の合格発表は9月なので、司法試験の合否が判明する前に採用活動が終了するということです。

(2020年はコロナウイルスの影響で司法試験の日程が8月中旬になったので、おそらく8月下旬から採用活動が始まるのではないかと思いますが、本日時点でまだ日程は発表されていません。)

 

ただし、魅力的な応募者が遅れて応募してきた場合には、いったん採用活動が終了した後であっても採用することがあります。

 

中規模・準大手の採用時期も、多くの場合は五大法律事務所と同様です

ただし、中規模事務所の場合、新規採用を毎年行っているとは限りませんし、そもそも原則として中途採用しか行っていない場合もあります。

 

2 採用基準

 

五大法律事務所の採用活動において重視される点は、

 

  1. 出身大学・大学院のレベル
  2. 大学・大学院時代の成績
  3. 予備試験合格の有無(合格している場合にはその成績も)
  4. 特殊経歴・特殊技能の有無
  5. 年齢
  6. (人柄)

 

です。

 

1と2のとおり、いい大学・大学院をいい成績で卒業したことは、五大の採用活動において非常に重視されます。実際、五大に入所する弁護士の大半は東大、京大、早慶のいずれかの出身者です(一橋は学生の数が多くありませんが、早慶と同等以上の扱いな気がします。続いて多いのは旧帝大と中央大でしょうか)。

 

また、3のとおり、予備試験に合格しているか否かも非常に重視されます。若いうちに予備試験に合格した人であれば、多少出身大学のランクや成績が劣っていても五大に入れる可能性は高くなります。

 

4の特殊経歴というのは、例えば有名企業で働いた経験を有していることです。有名企業で働いていた場合、その企業とのコネを期待できますし、その業界特有の知識や経験を活かせる可能性もあります。仕事のノウハウやマナーをすでに身に着けている点も魅力的です。

 

特殊技能というのは、例えば語学堪能であることです。企業法務系の事務所では英語や中国語を使う仕事もあるので、そのような言語を流ちょうに扱えることは魅力的です。また、その他の言語を扱えるのであれば、その言語を使用している国に関連する仕事を開拓できるかもしれません。

 

5の年齢は、できるだけ若いほうが有利です。あまり年齢が高いと五大の激務に耐えられない可能性もありますし、上としては仕事を振りにくくなります。

ただし、上記のように社会人経験がある人であれば、多少年齢が高くても障害にならない可能性はあります。

 

最後に、6の人柄です。あまりに性格に難があると、クライアントを怒らせてしまうかもしれませんし、将来自分でクライアントを開拓することが難しいかもしれません。また、チームで仕事をすることができない人かもしれません。さらに、何か問題を起こして事務所の評判を傷つける可能性もあります。

ただし、採用活動中に人柄を完全に見抜くことはできませんし、マナー等については働き始めてから教育すればよいので、若くて成績優秀な人であれば、多少人柄に問題があっても大きなマイナスにはなりません。

 

中規模・準大手の事務所の採用基準も、基本的にはこれと同様です。

ただし、中規模事務所の場合には大手よりも内部の人間関係が密になるので、大手に比べると人柄の重要度が増すと思います。

 

なお、イケメンや美女を優先的に採用しているとウワサされる事務所もありますが、真偽のほどは不明です(笑) ただ、見た目がクライアントの心情に与える影響は馬鹿にできないので、他の能力が同程度なら見た目がいい方が有利だとは思います。

 

3 採用プロセス

 

五大法律事務所の採用プロセスは、

 

  • サマークラーク(サマクラ)、ウインタークラーク(冬クラ)、スプリングクラーク(春クラ)を通じて、有力な候補者を見つける
  • 司法試験終了後、入所希望者が応募する
  • 応募者の中から採用基準に合う人を選定し、個別面接を行う(サマクラ・冬クラ・春クラの参加者には、応募してなくても事務所側からコンタクトをとる場合がある。面接なしで電話で採用オファーを出す場合もある)

 

というシンプルなものです。

 

サマクラ・冬クラ・春クラ(以下まとめて「サマクラ」)とは、学生に法律事務所での業務を体験してもらう制度のことをいいます。要するにインターンシップのことです。

期間は2日~5日間程度で、給料も1日1万円ぐらい出ます。

採用活動の一環であり、法律事務所側が魅力的な採用候補者を探すことに主眼があります。

 

最近では、五大法律事務所のサマクラには以下の4種類があるようです。

 

  • 学部生(3年生以上)の予備試験受験予定者または予備試験合格者を対象に、8月~9月に行うサマクラ(※TMI以外)
  • 法科大学院生を対象に、8月~9月に行うサマクラ
  • 法科大学院生を対象に、2月~3月に行う春クラ(※TMIのみ)
  • 予備試験合格者を対象に、11月~2月に行う冬クラ

 

サマクラ中は、学生に法律のリサーチをしてもらったり、メモ(検討結果をまとめた書面)をドラフトしてもらったりします。

しかし、学生の仕事が役に立つことはほとんどありませんし、数日間で出来ることは限られます。

そのため、実際には、食事に連れて行ったり、弁護士の講義を聞いてもらったりして、事務所側が学生をもてなす時間の方が長いと思います。その中で、事務所側は、学生の頭の回転の速さや人となりを確認するとともに、学生に事務所に対するいい印象をもってもらえるよう頑張るわけです。

もちろん、リサーチやメモのセンスがよければ大きな加点にはなります。

 

サマクラの結果、優先順位の高い候補者であると判断された場合には、採用活動が始まってすぐ事務所側から電話があり、できるだけ早い時期に個別面接の日程が組まれます。人によっては、面接せずに電話で採用オファーを受ける場合すらあります。

魅力的な候補者は他の事務所との取り合いになるので、事務所はできるだけ早くオファーを出して採用を決定したいのです。

 

中規模・準大手の法律事務所の場合も、個別面接を行って採用を決める点は五大法律事務所と変わりません。もっとも、サマクラを行っている事務所は限られます。

五大に比べて情報が出回りにくいので、「アットリーガル」などの情報サイトを利用したり、事務所のホームページを確認するなどして、積極的に情報収集を行う必要があります。

 

4 個別面接の概要

 

五大法律事務所の個別面接は、学生1人に対して弁護士3~4人ぐらいで、個室で行うのが一般的です。もっとも、厳密には決まっていない事務所もあり、途中で弁護士が入れ替わったり抜けたりすることもあります(企業のように採用活動の専任者がいるわけではないので、みんな仕事をこなしながら採用活動を行っています)。

 

質問される内容は、興味のある分野、趣味、学生時代の生活、親族中の法曹関係者の有無などですが、これも厳密には決まっていない事務所が多いと思います。むしろ、候補者に対して何か質問はないかと尋ねる時間の方が長い場合もあります。

上記のとおり、五大の採用基準において候補者の人柄が占めるウエイトは大きくなく、一見して大きな問題がなければ、基本的には書面上の成績順に採用が決まります。そのため、面接の内容はそこまで重要ではないのです。

 

面接の日程は、原則として優先順位が高い候補者から順番に決まります。

 

そして、優先順位が高い応募者の場合には、最初の面接で採用オファーを出す場合があります。サマクラに参加したことのある応募者の場合には、このパターンが多いです。また、近年は五大が大量採用を行っていたので、サマクラに参加していなくても即オファーを出す場合が少なくなかったと聞きます。

他の事務所と取り合いになっている候補者の場合には、面接後に飲み会に連れていき、酔ったすきにオファーを受諾するよう促したりもします(笑)

 

優先順位が中程度の応募者の場合には、2~3回面接を行い、優先順位の高い応募者の採用状況を見て、採用枠が残りそうな場合にオファーを出します。もっとも、面接してみて好印象だった場合には、すぐにオファーを出す場合もあります。優先順位に応じて、飲み会に連れて行ったり連れて行かなかったりします。

 

優先順位が低い応募者の場合には、比較的遅い時期に最初の面接が入ります。そして、何回か面接しつつ、その時点で有力な応募者を他の事務所に取られてしまっており、採用枠が残りそうな場合にオファーを出すことがあります。飲み会に連れていく候補者の数は限られます。

 

飲み会で使うお店は高級なお店ばかりで、高級焼肉や料亭にも連れて行ってもらえます。優先順位の高い候補者であれば、二次会で高級ホテルのおしゃれなバーに連れて行ってもらえることもあります。

 

私も就活生時代に何回か飲み会に連れて行ってもらいましたが、酔っぱらって寝ているパートナーがいたり、勝手にドンペリを注文するアソシエイトがいたり、三次会でこっそりキャバクラに連れて行ってくれる弁護士がいたりと、とても楽しかったのを覚えています(笑) 企業では考えられませんね。

 

弁護士は客前で話さねばならない商売です。営業で飲みに行くこともあるかもしれません。ですので、緊張して口数が少なくなるのはマイナスであり、あまり気負わずに楽しく話せた方が好印象だと思います。

 

中規模・準大手の法律事務所の場合は、五大法律事務所ほど大人数を採用するわけではないため、ひとりひとりの新人の重要度が高くなります。そのため、よほど魅力的な応募者でない限り、最初の面接ですぐにオファーを出すことはないと思います。

もっとも、サマクラを行っている事務所であれば、サマクラ参加者に対して最初の面接でオファーを出すこともあります。

 

また、中規模・準大手でも面接後に飲み会に行くことがありますが、五大ほどきらびやかなお店には行かないのが通常だと思います(笑)

 

なお、弁護士の就職については以下のような本も出ていますので、参考になるかもしれません。

五大法律事務所それぞれの特徴

前回は五大法律事務所の共通点について書いたので、今回はそれぞれの特徴について書いてみたいと思います。

 

なお、前回と同様、古い情報または正確ではない情報の可能性もありますし、私の個人的な意見も含みますのでご注意ください。

 

1 西村あさひ

 

西村あさひは、「体育会系・団体主義」の事務所だと思います。つまり、ワイワイとしたイベントや飲み会が好きな体育会系の人が集まる傾向にあり、かつ、個々の弁護士の裁量よりも組織としての規律を重んじる傾向にあるということです。

 

長年継続して国内最大手の地位を守っており、業界における知名度と評判は非常に高いです。国外進出も率先して行っています。スタープレイヤーが多く、所属弁護士が書いた本も数多く出版されています。

 

また、国内の法律事務所の中では組織として最も成熟しており、経営が上手いという印象があります(法律事務所は基本的に個人事業主の集まりであり、良くも悪くも組織運営が未成熟な場合が多いのですが、西村あさひは企業並みにキッチリと組織として運営されている印象があります)。

 

ただし、西村あさひは激務で有名であり、五大のなかでもアソシエイトの労働時間が一番長いと言われています。

 

所属弁護士は個性の強い人が多く、自分の夢や趣味について熱く語る人がたくさんいます。私が就活生時代に西村あさひのパートナーと食事に行かせていただいた際には、そのパートナーは採用活動の場にもかかわらず終始自分の好きなアイドルの話をし続けていたので、反応に困った記憶があります(笑)

弁護士などの専門家は周りを気にしない人の方が向いているといわれているので、この傾向は別に悪いことではないと思います。ただ、典型的なA型の日本人だと埋没してしまうかもしれません。

 

基本的にチームで動くので、チームトップのパートナーと合わないと辛いという話も聞きます。

もっとも、師匠と弟子のような関係になるので、チーム内の弁護士から多くのことを学べるという意見もあるようです。

 

最大手だけあって取り扱い分野は幅広く、どの分野でも強いです。特に、M&Aと倒産・危機管理については五大の中でも高い評判を誇っています。

 

給与は固定給+ボーナスで、固定給部分が毎年増えていく方式です。

 

体力に自信があり、体育会系のノリが好きで、チームで頑張るのが好きという方には向いているのではないでしょうか。

 

2 アンダーソン・毛利・友常

 

アンダーソンは、「文化系・個人主義」の事務所だと思います。つまり、穏やかな性格の人が集まる傾向があり、かつ、比較的個々の弁護士の裁量を重んじるということです。

 

極端な性格の人が少なく、四大の中では一番人当たりのいい人が多い印象があります。

 

五大の中では労働時間が短い方と言われています。

ただし、アンダーソンのアソシエイトの労働時間は個人差が大きく、五大で一番忙しいアソシエイトはアンダーソンにいるという話も聞いたことがあります。

 

前身となる「アンダーソン・毛利法律事務所」が外国人弁護士により設立されたという経緯もあり(実は毛利氏もアーサー・毛利という日系アメリカ人です)、いまでも外資系法律事務所に似た文化を有しているようです。

 

もっとも、現在のアンダーソンは、上記のアンダーソン・毛利法律事務所と、「友常木村法律事務所」と「ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所」の3事務所が合併・統合して成立した事務所です。そして、友常木村とビンガムは、日系企業のようなウェットな文化を持っていました。

そのため、上記の「文化系・個人主義」とは全く異なる特徴をもつ弁護士もたくさん所属していると聞きます。特に、友常木村が得意としていた証券発行系の案件や、ビンガムが得意としていた倒産・危機管理案件を専門とする弁護士については、その傾向が強いのではないかと思います。

 

五大の中でも海外クライアントの比率が大きく、海外におけるプレゼンスは大きいと言われています。若手アソシエイトのうちから英語を扱う案件に関与することも多いようです。また、留学にいくアソシエイトの割合もかなり多いと思います。

 

また、四大の中では唯一セクション制(分野ごとに部門を区切る方式)を採用していないため、アソシエイトは色々な分野の案件に関与することができると言われています。

ただし、色々な分野の案件をやる場合、特定の分野の案件を繰り返すよりも大変ですし、専門性を高めるのに時間がかかるので、それらの点は覚悟する必要があります。

 

分野としてはキャピタルマーケッツを含むファイナンスに強く、M&Aや訴訟は他の四大と比べて若干弱いというイメージです。ただし、上記のとおり海外におけるプレゼンスは大きく、国際案件全般に強いとはいえそうです。あと、労働事件も五大の中では多く扱っている印象があります。

 

給与は2年目まで固定給、3年目からは固定給+顧客への請求金額に応じた歩合給です。歩合給を採用しているので、頑張りによっては西村や森濱田よりも多くの収入を得られる可能性があります。

 

国際的な案件に興味がある人、色々な分野の案件をやってみたい人、大企業の労働案件をやってみたい人などには向いているのではないかと思います。

 

3 長島・大野・常松

 

長島は、「文化系・団体主義」の事務所だと思います。つまり、穏やかな性格の人が集まる傾向があり、かつ、個々の弁護士の裁量よりも組織としての規律を重んじる傾向にあるということです。

 

アンダーソンと同様、極端な性格の人が少なく、穏やかで接しやすい人が多い印象があります。また、弁護士事務所は企業と比べると変人に寛容な場合が多いのですが、長島は事務所全体としてキチッとしており、身だしなみや礼儀に厳しいという印象もあります。

 

また、長島は五大の中でもアソシエイトに対する評価がシビアで、評価されているアソと評価されていないアソで、扱いかはっきりと違うとも言われています。

例えば、評価されているアソにはどんどん仕事が振られるのに対し、評価されていないアソには仕事が全然振られない(干される)と聞きます。

また、評価されているアソは留学後の海外研修先まで事務所が面倒を見てくれるのに対し、評価されていないアソは自分で研修先を探さなければならず、もっと評価されていないアソは留学後に事務所に戻ってこなくてよいと言われる、という話も聞きます(研修先については、実際には仲のいいパートナーがコネを持っているかどうかが大事であって、必ずしも評価と結びついているというわけではなさそうですが)。

よく言えば実力主義、悪く言えば冷たいということでしょうか。

 

また、そのように評価がシビアなので、パートナーになるのも五大のなかでも難しい方であると聞きます。

 

どの分野にも強いですが、特にファイナンスにおける評判は高いです。また、税務訴訟では国を相手に連戦連勝であったとも聞きます。

 

給与は2年目まで固定給、3年目からは固定給+労働時間に応じた歩合給です。長島はこの歩合給の割合がいいことで有名であり、おそらく五大の中で最もアソシエイトの給料が高くなりやすいのは長島だと思います。

ただし、上記のとおりアソシエイトに対する評価がシビアらしいので、パートナーから仕事がもらえず労働時間が増えない場合には、必ずしも給料が高くなるわけではないでしょう。

 

キッチリした雰囲気が好きであり、バリバリ働いて若いうちからガッツリと稼ぎたいと考えている方にはおすすめできる事務所です。

 

4 森・濱田松本

 

森濱田は、「体育会系・個人主義」の事務所だと思います。つまり、ワイワイとしたイベントや飲み会が好きな体育会系の人が集まる傾向にあり、かつ、比較的個々の弁護士の裁量を重んじるということです。

 

その体育会系ぶりは、西村あさひよりも上なのではないかと思います。体格がよく声の大きい豪快な人が多いイメージです。

私が就活生として森濱田のパートナーと食事に行かせていただいた際には、一次会で焼き肉を食べ、二次会でたらふくお酒を飲み、もうお腹いっぱいだと思っていたところ、パートナーが締めの卵かけご飯を人数分注文しだしたので、「これがモリハマか!!」と感動したのをよく覚えています(笑)

 

また、森濱田の面白いところは、案件を一次的に担当する若手アソシエイトをパートナーよりも前面に押し出すことです。

依頼者はアソシエイトではなくパートナーのお客さんなので、一般的には、アソシエイトをパートナーよりも前面に押し出すことはしません。例えば、書面に弁護士の名前を記載するときは、パートナー⇒アソシエイトの順番に記載するのが通常です。また、依頼者との直接の連絡は原則としてパートナー(またはパートナー就任が近いシニアアソシエイト)が行うという事務所もあります。

しかし、森濱田では、たとえ担当アソシエイトが若手であろうと、書面にアソシエイト⇒パートナーの順番に名前を記載することが少なくありませんし、クライアントとの直接の連絡も基本的に担当アソシエイトが行うらしいです。

このような環境下で仕事をすれば、アソシエイトはモチベーションを高く保てるかもしれません。

 

分野としては、特に訴訟・紛争とM&Aの評判が高いです。M&Aは、いまのところ森濱田と西村あさひが国内の2強といえると思います。訴訟・紛争については、前身である森綜合法律事務所の時代からとても有名であり、五大の中でも森濱田が圧倒的な評判を誇ります

 

ただし、国際案件については、他の四大に比べてプレゼンスが小さい印象があります。留学にいくアソシエイトの比率も他の四大と比べると低いと思います。海外案件を全く扱っていない弁護士の比率も五大の中では大きいのではなでしょうか。

 

給与は、1年目は固定給、2年目からは固定給+ボーナス(労働時間または顧客への請求額に応じた評価に基づく)です。

 

体育会系のノリが好きで、国内案件をバリバリやりたいと思っている方には向いているかもしれません。

 

5 TMI総合

 

TMI総合は、四大とはかなり異なる特色を有する事務所です。

 

体育会系か文化系かというと、ちょうどその中間ぐらいでしょうか。また、団体主義か個人主義かについては、下記のように中小事務所の特色を残していることから、どちらかというと個人主義だと思います。

さわやかなスポーツマンタイプの人が多く、四大と比べると良くも悪くも「普通」の人が多い印象です。

 

ベンチャー案件や知財案件を売りにしており、六本木ヒルズにオフィスを構えるなど、ぱっと見では「今どき」な印象を受ける事務所です。しかし、近年急拡大した事務所であることもあり、その実態は、中小規模事務所の頃の性質を色濃く残した、コテコテの日系企業のような事務所だと聞きます。

例えば、弁護士400人を超える規模になったにもかかわらず、いまでも毎年事務所全体での旅行があるというから驚きです。

2019年には、事務所の創立30周年を祝うため、有名作曲家に依頼して事務所の社歌(!)を作り、サントリーホールを貸し切って豪華なコンサートを開催したそうです。

 

また、四大と比べると弁護士報酬の値下げが激しいことで有名です。そして、その値下げは、パートナーが関与する時間を極力減らし、アソシエイトが中心になって案件をこなすことで何とか実現しているそうです。

また、弁護士の出身大学や成績の全体的なレベルは、四大に比べると少し劣ります(ただし、直近数年の入所者の経歴は四大とそん色ないので、この差は解消されていくと思います)。

そのため、すくなくとも現時点では、四大に比べて仕事の平均的なクオリティが多少劣ることは否めないと思います。

 

もっとも、すべての案件で最高のクオリティの仕事が求められるとは限らず、依頼者からすれば、1000万円で100点の仕事をするよりも、500万円で80点の仕事をした方がありがたいこともあります。

また、アソシエイトとしては、自分が中心となって案件をこなすことで、四大よりも多くの経験値を得られる可能性があります。

そのため、ビジネスの観点やアソシエイトの成長の観点からは、TMIが四大に劣っているとまで言えないと思います。

 

また、上記のとおりTMIはベンチャー案件や知財案件などを売りにしており、そのような案件ではかなりのプレゼンスを有していると思います。

ベンチャーキャピタルファンドやデータプライバシーに関する会社を自ら設立するなど、法律事務所としては異例ともいえる取り組みも行っており、今後それらの分野でのプレゼンスがますます大きくなることも予想されます。

 

給与は固定給+ボーナスで、固定給部分が毎年増えていく方式です。四大と比べると固定給の金額が数百万円ぐらい低いと言われており、これも採用活動で四大に後れを取る原因になっています(初任給でいうと、四大が1200万円ぐらいでTMIが1000万円ぐらいでしょうか)。

もっとも上記のとおり、いまのところは「常に最高のクオリティの仕事をして高い報酬を請求する」という方針ではないようなので、そもそも四大に採用で競り勝つつもりはないのかもしれません。

 

また、パートナーへの就任も、いまのところ四大ほど難しくはないと聞きます。

 

いい人たちと一緒に、事務所内での人間関係を大切にしつつ、給料の高さよりも弁護士としての総合的な成長を重視したいと考えている人には、TMIが向いているかもしれません。

五大法律事務所とは

日本には「五大法律事務所」と呼ばれる超大手法律事務所があります。それは、

 

① 西村あさひ法律事務所

② アンダーソン・毛利・友常法律事務所

③ 長島・大野・常松法律事務所

④ 森・濱田松本法律事務所

⑤ TMI総合法律事務所

 

の5つです。

 

数年前まではTMIを除く4つを「四大法律事務所」と呼ぶことの方が多かったですが、TMIが弁護士数でも取り扱い分野でも四大とそん色なくなってきたので、最近はTMIを入れて「五大法律事務所」と呼ぶことも多くなりました(ただし、TMIを除く4つを四大法律事務所と呼ぶことは今でも多いです)。

 

私はかつて五大法律事務所の1つに所属していましたし、他の五大に所属している(または所属していた)友人もたくさんいるため、五大の内部事情をある程度知っています。そして、外から見る限りでは五大はどれも似たり寄ったりに見えますが、内部事情を知る者からすると結構違いがあります。

 

そこで、各事務所の共通点と個別の特徴を、私の知る限りでまとめていきたいと思います。

古い情報や正確ではない情報の可能性もありますし、私の個人的意見も含んでいますのでご注意ください。

 

共通点

 

⑴ 所属弁護士が多い

 

五大と言われるだけあって、所属弁護士数が他の法律事務所と比べてめちゃめちゃ多いです。ジュリナビの「2019年全国法律事務所ランキング200」によれば、2019年1月時点の所属弁護士数は、

 

  • 西村あさひ 565人
  • アンダーソン 467人
  • 長島 458人
  • 森濱田 413人
  • TMI 428人

 

と、いずれも400人を超えています。6位のべリーベスト法律事務所が178人なので、五大法律事務所の規模が業界においていかに突出しているかが分かると思います。

 

⑵ 採用人数が多い

 

所属する弁護士が多いから当然ではありますが、五大法律事務所は採用する弁護士の数も他の事務所と比べて圧倒的に多いです。例えば、2019年12月または2020年1月には、

 

  • 西村あさひが53人
  • アンダーソンが37人
  • 長島が38人
  • 森濱田が51人
  • TMIが35人

 

の新人弁護士を採用しています。日本で20番目に大きい法律事務所である「牛島総合法律事務所」の所属弁護士が51人(2019年1月時点)であり、西村あさひと森濱田は新人弁護士だけでもこれと同等以上の規模になるわけです。

 

採用人数は毎年異なりますし、景気によっても左右されます。リーマンショック後には15人前後しか採用していないこともありました。もっとも、ここ数年は景気もよく、どの事務所も拡大傾向にあったようです。

 

ただし、コロナウイルスの影響で今後数年間は採用人数が減少する可能性もあります。

 

⑶ 取扱い分野が広い

 

医者の専門が外科医、内科医、麻酔科医といったように分かれているのと同じで、弁護士にも得意分野・不得意分野があります。そして、中小規模の弁護士事務所の場合、所属弁護士の中にその分野を得意とする人がいない場合には、その分野の案件を事務所としてこなすことができない場合があります(特に、税務やファイナンスといった専門性の高い分野についてはその可能性が高いです)。

 

また、案件によっては、要求される作業量が非常に多く、中小規模の事務所ではマンパワー的にこなすことが難しい場合もあります。

 

しかし、五大法律事務所の場合、400人以上も弁護士が所属しているだけあり、基本的にすべての分野に対応できるだけの専門性とマンパワーを有しています。このように、1つの事務所であらゆる案件をこなすことができる(いわゆるワンストップサービスを提供できる)というのは、五大の特徴だと思います。

 

⑷ 給料が高い

 

五大法律事務所の初任給は、いずれも1000万円を超えています。これは他の一般的な法律事務所と比べてかなりの高水準です。また、五大法律事務所に入る新人弁護士の多くが20代半ばであることを考えると、一般的な日系企業とくらべてもかなりの高水準ではないでしょうか。

 

また、事務所によっては、3年目か4年目で年収が2000万円を超える場合もあります。五大のうちの1つに所属する私の友人は、4年目で2500万円ぐらい稼いでいました。

 

⑸ 採用決定時期が早い

 

五大法律事務所の採用活動は、司法試験が終了してすぐの6月1日あたりから始まり、司法試験の合格発表よりも前に終わります。つまり、司法試験に合格しているか分からないうちに採用活動が行われます。

 

そのため、採用の際には司法試験の成績は考慮されず、出身大学・大学院やそこでの成績(予備試験合格者であればその成績も)が重視されます。

 

⑹ 入るのが難しい

 

業界でも高い評判を誇り給料も高いので、五大法律事務所は就活生の間で非常に人気です。そのため、いい大学・大学院をいい成績で卒業し、早期に司法試験に合格しないと、入るのは難しいと言われています(もちろん例外はあります。語学堪能とか、もともと企業で働いていて特定の分野に詳しいなどの特殊技能があれば、出身大学や成績にかかわらず入れることもあります)。

 

ただ、近年は五大の採用人数が非常に多いので、採用人数が少ない時期と比べれば入るのは簡単になったとも言われています(5つ合わせれば214人も入っているので)。中途採用を積極的に行っている事務所もあるようです。

 

そのため、近年は人気のある中小規模の事務所に入る方が難しかったのかもしれません。もっとも、コロナウイルスの影響で今後採用人数が減った場合には、入るのが今より難しくなるとは思います。

 

⑺ めちゃめちゃ忙しい

 

五大法律事務所は、どこも激務で有名です。特にアソシエイトのうちは、朝10時に出勤し、そのまま次の日の朝5時まで働くということもそれほど珍しくはありません(私も経験があります)。5日間連続で深夜2時、3時まで働くこともあります。また、土日のいずれかは基本的に働きます。

冗談で「五大の弁護士の勤務時間は9時-5時(朝9時から翌朝5時まで)である」などと言うことがありますが、これも完全な冗談とは言えないわけです。

 

五大のアソシエイトは、最初の頃は夜遅くから飲み会をして忙しい自慢をし合ったりしますが、段々と忙しいことのつらさを実感して、そんなことはしなくなります。

 

また、その忙しさゆえ、最初からいつかは辞める前提で入所する人が多いことも五大の特徴だと思います。五大は日本最高峰の法律事務所であるにもかかわらず、同僚がインハウス(企業内弁護士)や中規模事務所に転職する際には、「うらやましい」という感想を抱く人が多いというぐらいです。

 

そのため、体力に自信のある人でないと、生き残るのは難しいかもしれません。

 

次回は、各事務所の特徴について書きたいと思います。