法律の基礎③

5 一般法と特別法

 

法律には様々な区分がありますが、ここでは、一般法と特別法の関係について簡単にご説明します。

 

一般法とは、ある分野において一般的に適用される法律のことをいいます。一方、特別法とは、その分野のうち特定の領域または事項について、特別に適用される法律のことをいいます。ある事項について一般法と特別法の両方が適用される場合、特別法が一般法に優先して適用されます。

 

一般法と特別法の典型例は、民法と商法です。民法が一般法、商法が特別法の関係にあります。また、例えば賃貸借契約については、一般法である民法に加えて、特別法である借地借家法も適用されます。

 

一般法と特別法の関係は相対的なものです。民法との関係では商法は特別法ですが、ある特定の種類の商人や商行為についてのみ適用される法律があれば、その法律との関係では商法が一般法となります。法律の中に「この法律は一般法です」とか、「この法律は○○法の特別法です」などと書いてあるわけではありません。

 

したがって、ある事項について適用される法律がないかを検討するときには、適用されそうな法律を1つ見つければ足りるというわけではなく、その他に適用される特別法がないかも確認しなければなりません。

 

6 法律の用語に解釈を加えなければならない場合

 

法律は、社会で守られるべきルールを定めたものです。法治国家においては、ある人と別の人との間で争いが起これば、最終的には法律に従ってどちらが正しいのかを決めることになります。

しかし、法律がいつも明確にルールを定めているとは限りません。ある法律が適用されるか否かを判断するためには、その法律の用語に解釈を加えなければならない場合が少なくありません。

 

・法律の用語解釈の例‐民法177条の「第三者

 

法律の用語に解釈を加えなければならない場合の典型例として、民法177条を適用する場合があります。民法177条は、不動産に関する物権の取得、喪失および変更については、登記をした後でなければ第三者に対して主張することができない旨を定めています。

 

民法177条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

「物権」とは、物を支配する権利をいいます(第3章で解説します)。また、登記とは、不動産の持ち主などを役所に登録して、権利関係を公に明らかにする制度のことをいいます。登記されている事項は、各地域の法務局で確認することができます(なお、実際には「不動産登記」、「船舶登記」、「債権譲渡登記」など色々な種類の登記がありますが、ここでは説明の便宜上、登記といったら不動産登記のことを意味することにします)。

 

つまり、民法177条は、不動産に関する物権を取得したり喪失したりしても、そのことを法務局に登録して公に明らかにしない限り、「第三者」に対して、「それは私の不動産です」、「それはもう私の不動産ではありません」などとは主張できない、ということを定めているのです。

 

民法177条が適用される典型的な場面は、土地の二重譲渡があった場合です。例えば、Xという土地があったとします。AさんがBさんにX土地を売却した後、さらにAさんがCさんに同じX土地を売却した場合、民法177条に従えば、BさんはCさんよりも先に登記しない限り、Cさんに対して「X土地は私のものです」と主張できないことになります。

 

しかし、「第三者」とは、どこまでの人を含むのでしょうか?例えば、上記の例でCさんが、AさんがBさんにすでにX土地を売却したことを知りながらX土地を購入した場合、BさんにとってCさんは、登記をしなければ権利を主張できない「第三者」に当たるでしょうか?また、CさんがBさんに嫌がらせをするためにX土地を購入した場合はどうでしょうか?

民法177条には「第三者」としか書いてないため、このような場合でもCさんがBさんにとっての「第三者」に当たるのかを解釈しなければなりません。

 

この点について、裁判所は、民法177条にいう第三者とは、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、不動産物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者をいう」と解釈しています(「欠缺」は「けんけつ」と読み、ある要件が欠けていることを意味します)。

そして、先行する不動産売買があったことを知りながら同一の不動産を購入したにとどまる人は「第三者」に含まれるものの、先行する不動産売買の買主を困らせる目的で同一の不動産を購入した人(「背信的悪意者」といいます)は、「登記欠缺を主張する正当の利益を有する者」とはいえないとして、「第三者」に当たらないと解釈されています。

 

したがって、上記の例でいえば、BさんにすでにX土地を購入したことを知りながらCさんがX土地を購入したとしても、CさんはBさんにとって「第三者」に当たるため、Bさんは登記しない限り、Cさんに対してX土地の所有権を主張することができません。しかし、CさんがBさんを困らせる目的でX土地を購入したのであれば、CさんはBさんにとって「第三者」には当たらないため、BさんはCさんに対して、登記しなくてもX土地の所有権を主張することができます。

 

このように、法律の規定を知っていれば紛争を解決することができるというものではなく、場合によっては、その法律の用語がどのような意味なのかを解釈する必要があるのです。

 

・法律の用語の解釈方法

 

法律の用語の解釈に画一的な方法はありません。しかし、いくつか使うことのできるテクニックはありますので、その一部を紹介したいと思います。

 

まず、その法律自体に用語の定義が記載されている場合があります。この場合には、法律の用語に独自の解釈を加える必要はなく、定義のとおりに理解すれば足ります。例えば、会社法2条1号は、「会社」とは「株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう」と定めています。この規定を読めば、会社法の中で使われる「会社」という用語に宗教法人などが含まれないことを理解することができます。

 

法律に用語の定義が記載されていない場合、まずはその用語の一般的な意味を考えます。例えば、先述した民法177条の「第三者」という用語であれば、一般的な意味から、基本的には当事者以外の人を意味するのだと理解できます。

もっとも、法律特有の言い回しもあるため注意が必要です。例えば、法律用語では、「善意」とはある事実を知らないことを意味し、「悪意」とはある事実を知っていることを意味します。「先行する売買について善意の第三者」という場合は、先行する売買があったことを知らない第三者のことを意味します。

 

法律の用語を解釈するため、その法律が制定される過程における議論を参照することもあります。すでにご説明したとおり、法律を制定するのは国会です。そのため、法律に定義が書かれていなくても、国会がその用語の意味を明確に認識して法律を制定したのであれば、国会の認識どおりに用語を理解すべきだといえます。国会の認識は、その法律について議論した会議の議事録などから確認することができます。

また、最終的に法律を制定するのが国会だとしても、法律案の作成には、その法律の運用に従事することになる省庁(いわゆる所管省庁)も関与しています。そのため、所管省庁が公表する資料も、国会の認識と必ず一致するわけではありませんが、法律の用語を解釈するうえでかなり参考になります。

 

ある特定の場合にその法律が適用されることが法律の中に明記されている場合、それ以外の場合にはその法律が適用されないのだと解釈できることがあります。このような解釈を「反対解釈」といいます。例えば、民法737条1項は「未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。」と定めています。この規定の反対解釈から、成年の子が婚姻をする場合には父母の同意を得る必要がないということを理解することができます。

ただし、反対解釈が常に適切であるとは限りません。例えば、「土日は会社が休みである」と言った場合、反対解釈により平日は仕事があるのだろうと推測することができますが、もしかしたら水曜日も休みかもしれません。これと同じで、法律の用語についても、反対解釈が適切かどうかはその規定の趣旨、他の規定の内容、立法過程の議論なども踏まえてよく検討する必要があります。

 

法律の規定を適用する場合には、以上のようなテクニックを使いながら、その規定ごとに妥当な解釈を探求する必要があります。なお、以上は法解釈の一例にすぎません。法解釈は、それだけで一冊の本が書けるほど複雑で奥が深いです。

法律の基礎②

4 法律以外の法規範

 

「法律」以外の法規範についても簡単に触れておきます。「法律」以外の法規範には、憲法政令、省令、内閣府令などがあります。

 

憲法とは、法律よりも上位に位置する国の最高規範のことです(第2章で解説します)。政令、省令、内閣府令は、それぞれ以下のようなものです。

 

  • 政令:内閣が、憲法または法律の規定を実施するために発する命令。主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連著し、天皇が公布する。法律の委任がない限り、政令には罰則を設けることはできない(憲法73条6号、74条、7条1号)。
  • 省令:各大臣が、主任の行政事務について、法律もしくは政令を施行するため、または法律もしくは政令の特別の委任に基づいて発する命令。省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、または義務を課し、もしくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(国家行政組織法12条1項・3項)。
  • 内閣府内閣総理大臣が、内閣府の主任の行政事務について、法律もしくは政令を施行するため、または法律もしくは政令の特別の委任に基づいて発する命令。内閣府令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。(内閣府設置法7条3項・4項)

 

この説明を読んでもよく分からないと思いますので、具体例を見てみましょう。なお、以下の具体例は、あくまで政令や省令・内閣府令のイメージをつかんでいただくためのものにすぎませんし、細かい話なので、内容を覚えていただく必要はありません。「法律から政令や省令への委任はこんな感じで行われるのか」と大まかに理解していただければ結構です。

 

政令や省令の具体例

 

取締役会を設置している株式会社が株主総会を開催する場合、取締役は株主に対して、株主総会の招集通知を書面で送付しなければならないのが原則です(会社法299条1項・2項2号)。しかし、会社法299条3項は以下のとおり、電磁的方法(Eメールなど)で招集通知を送付することを例外的に認めています。

 

会社法299条3項

取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。

 

会社法299条3項によれば、取締役は、政令で定めるところにより株主から承諾を得れば、Eメールなどの電磁的方法により株主総会の招集通知を送付することができます。つまり、株主から承諾を得る具体的な方法は政令に委任されており、会社法自体には書かれていないということです。これが、法律から政令への委任の例です。

 

この会社法の規定を受けて、「会社法施行令」という政令が、以下のように定めています。

 

会社法施行令2条1項

次に掲げる規定により電磁的方法により通知を発しようとする者(次項において「通知発出者」という。)は、法務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該通知の相手方に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

② 法第二百九十九条第三項(法第三百二十五条において準用する場合を含む。)

 

会社法施行令2条1項2号によれば、株主総会の招集通知を電磁的方法により送付したい取締役は、法務省令で定めるところにより、あらかじめ、招集通知の相手方に対して電磁的方法の種類と内容を伝え、書面または電磁的方法により承諾を得なければならないものとされています。

この規定により、電磁的方法による招集通知の送付について、株主から承諾を取得する方法がかなり明確になりました。しかし、この規定もさらに具体的な内容を省令(法務省令)に委任しているため、承諾の取得方法を完全に把握するためには、法務省令を見なければいけません。

 

この会社法施行令政令)の規定を受けて、「会社法施行規則」という法務省令の第230条が、「電磁的方法の種類及び内容」の具体的な内容を定めています(少し複雑な条文なのでここでは引用しません。インターネットで閲覧可能なので、興味がある方は読んでみてください)。

 

以上のように、法律が大まかな内容を定めたうえで、詳細な内容の決定を政令に委任し、政令がさらに詳細な内容の決定を省令や内閣府令に委任するということが頻繁に行われています。

 

では、なぜこのように回りくどい方法をとる必要があるのでしょうか?詳細な内容を定めるのであれば、最初から法律で定めればよく、政令や省令に委任する必要はないのではないでしょうか?

もちろん、この疑問にはちゃんとした答えがあります。技術や慣習は、時代とともに変化するものです。先ほどの例では、「電磁的方法」による招集通知の送付が問題になっていました。そして、「電磁的方法」の内容はまさに技術の発展により変化しやすいものです。今のところホームページへの掲載やEメールが主流ですが、最近はLINE、Skype、WhatsAppなどのメッセージアプリも同じぐらい普及しています。将来的にはさらに進歩した連絡方法が主流になるかもしれません。そうなった場合、「電磁的方法」による招集通知の送付方法に変更が生じる可能性があり、法律を改正しなければならないかもしれません。

 

しかし、すでにご説明したとおり、法律の改正には衆議院参議院の決議が必要になります。そして、両議院で決議を得るためには膨大な時間と費用が必要になります。そのため、いちいち法律の改正が必要になるとすると、時間がかかり過ぎて変化についていけなくなる可能性がありますし、費用もかさみます。

 

そこで、詳細な内容は政令や省令・内閣府令で定めることにしておけば、改正が必要になったとしても、法律の改正ほどの時間や費用がかからなくて済むのです。

 

また、最新の情報について議論する際には、国会で情報を集めて審議するよりも、その分野に詳しい担当省庁に任せた方が効率的です。この観点からも、変化しやすい事柄については、法律で定めるよりも政令や省令に委任した方が効率的なのです。

法律の基礎①

第1章 法律とは何か

 

1 形式的意味の法律と実質的意味の法律

 

「法律」という言葉には2つの意味があります。

1つ目の意味は、国会により制定された「法律」という名前の法規のことです。この場合、その他の法規(憲法政令など)は含みません。この意味で用いられる場合の法律を「形式的意味の法律」といいます。

2つ目の意味は、法規範全般のことです。つまり、憲法政令などの法規範をすべて含めて「法律」と呼ぶ場合のことです。この意味で用いられる場合の法律を「実質的意味の法律」といいます。

 

日常生活で「法律を守りましょう」などと言うときは、普通は政令なども含みますので、実質的意味の法律を指します。一方で、ニュースで「国会が新たな法律を制定した」などと言うときは法律という名前の法規のことを意味しますので、形式的意味の法律を指します。

本記事では特別の断りのない限り、「法律」と言う場合には形式的意味の法律、つまり「法律」という名前の法規のことを意味します。

 

2 法律は「六法」だけではない

 

法律に詳しくない方でも、「六法全書」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。六法全書とは、基本的な6つの法律(六法)に加えて、六法に関連する法律とその他の重要な法律を掲載した法規集のことです。有斐閣という出版社から出版されています。そのほかにも、「ポケット六法」、「デイリー六法」など、六法全書のコンパクト版のようなものや、「税務六法」「会計監査六法」など、特定の職種向けの法規集も存在します。

「六法」には、①憲法、②民法、③刑法、④商法(会社法)、⑤民事訴訟法、および⑥刑事訴訟法が含まれます。会社法はかつて商法の一部でしたが、2005年の法改正により別の法律になりました。昔の名残で、「六法」というときには商法と会社法を1つとして数えます。六法は日本の司法試験の試験科目にもなっており、最も基本的な6つの法律ということができます。

 

もっとも、六法全書に六法以外の法律が掲載されていることからも分かるとおり、日本には六法以外にも沢山の法律が存在します。

例えば、賃貸借契約には民法のほか「借地借家法」という法律が適用されますし、労働関係の法律には「労働基準法」、「労働契約法」、「最低賃金法」、「男女雇用機会均等法」などがあります(「労働法」という名前の法律は存在しません。)。また、税務関係の法律には「所得税法」、「法人税法」、「相続税法」、「消費税法」などがあります。ほかにも、「弁護士法」、「公認会計士法」、「医師法」など、特定の職業についての資格や権限を定めた法律もあります。祝日は「国民の祝日に関する法律」という法律によって決められています。これらは沢山の法律のごく一部にすぎません。総務省が公表しているデータによれば、日本には2000個以上もの法律が存在しています。

 

3 法律を制定するための手続き

 

法律の制定方法は、憲法59条に定められています。憲法59条1項によれば、法律案は、衆議院参議院の両議院で可決したときに法律となります。

 

憲法59条1項

法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

 

そして、衆議院参議院のいずれについても、3分の1以上の議員が出席し、出席議員の過半数が賛成すれば議案を可決することができます(憲法56条)。つまり、両議院のそれぞれにおいて、3分の1以上の議員が出席した会議で、出席議員の過半数が法律案に賛成すれば法律が成立することになります。

 

では、衆議院参議院で意見が分かれた場合はどうなるのでしょうか。この場合については、憲法59条2項が衆議院の優越を認めています。

 

憲法59条2項

衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

 

憲法59条2項によれば、衆議院が可決した法律案を参議院が否決した場合であっても、衆議院が出席議員の3分の2以上の賛成をもってその法律案を再び可決すれば、法律が成立します。

このように、衆議院参議院よりも強い権限が認められているのは、衆議院議員の場合にはその任期(4年)が参議院議員の任期(6年)よりも短く、かつ衆議院の解散によってさらに短い期間で入れ替わる可能性があることから、衆議院の方が参議院よりも国民の意思を反映しやすいためです。なお、衆議院議員の任期は憲法45条、参議院議員の任期は憲法46条に定められています。

 

成立した法律は、天皇により公布されます(憲法7条1号)。「公布」とは、成立した法律や命令を一般に周知するため、国民が知ることのできる状態に置くことをいいます。

法律を公布する方法は憲法や法律で定められていませんが、慣例上、官報に掲載する方法で行われます。「官報」とは、政府の発行する新聞のようなものです。官報販売所で入手できるほか、国立印刷局のホームページ(https://kanpou.npb.go.jp/)で、直近30日間分の内容が無料で閲覧できるようになっています。官報には成立した法令以外にも、会社の解散公告や決算公告なども掲載されます。見たことがない方はこの機会に一度見てみると面白いかもしれません。

 

法律が実際に適用されるようになることを「施行」といいます。「せこう」と「しこう」の2通りの読み方があります(どちらの読み方をしても大丈夫です。法律の専門家は「せこう」と読む傾向がありますが、ニュースなどでは「しこう」と読まれる傾向があります)。

通常、法律は公布から一定の期間を置いてから施行されますが、公布の日から施行される法律もあります。1つの法律であっても、部分ごとに施行日が分かれている場合もあります。そのため、現在適用されている法律を確認するためには、新しい法律が公布されているかだけではなく、その法律(の関係する部分)がすでに施行されているかも確認しなければなりません。法律の施行日は、通常、その法律の後ろの方に「附則」という形で定められています。

英語の勉強におすすめのYoutubeチャンネル

アメリカに留学するために英語を勉強していた際、Youtubeには大変助けられました。(今でも助けられています。)

他にも英語の勉強におすすめのチャンネルをまとめているブログ等はありますが、若干情報が古かったりするので、2023年1月時点でおすすめのチャンネルをまとめたいと思います(主に中級者向けです。)。

  1. BBC Learning English
    • イギリスの公共放送局BBCが英語学習者向けに提供するチャンネル。6 minutes Englishというポッドキャスト(ラジオ)を通学・通勤中に聞くのがおすすめ。6 minutes Englishを複数まとめたBox Setというものも用意されていてありがたい。
  2. VOA Learning Englilsh
    • Voice of Americaが英語学習者向けに提供するチャンネル。BBC Lerning Englishよりもスピードはゆっくり目なので、初級者以上・中級者未満の人にもおすすめ。
  3. Voice of America
    • VOA Lerning Englishではゆっくりすぎるという方にはこちら。
  4. Wall Street Journal
    • 最新の経済ニュースを確認できるので見ていて楽しい。
  5. CNN 10
    • アメリカのメディアがStudent向けに提供するチャンネル。旧名はCNN Student News。話すスピードはそれなりに速いが、Student向けなので内容は分かりやすい。
  6. あいうえおフォニックス
    • 日系アメリカ人の親子が提供するチャンネル。日本語をベースに、英語を織り交ぜて発音などの解説をしてくれる。他のチャンネルで疲れた際にでも見ると結構勉強になる
  7. Gariben TV
    • 色々な英語のスピーチや会話に字幕を付けて提供しているチャンネル。興味深い内容が多く字幕も大きいので、最初のうちはかなりお世話になった。
  8. CNN
    • CNN 10は段々と飽きてくるので、もう少し本格的なニュースを見たい方はこちら。
  9. CNBC
    • CNNと用途はほぼ同じ。
  10. MJ and Adam Show
    • もともとスピードラーニングが提供していたSpeak Up Radioというチャンネルを、出演していたMJとAdamが承継したもの。正直Speak Up Radio時代の方がクオリティは高かったが、いまでも適度なスピードで楽しい会話を聞かせてくれるのでたまに見ている。

基本的にニュースは比較的ゆっくりとはっきりとしゃべってくれるのでおすすめです。

他にもTEDなどがありますが、中級者ぐらいだとアタリハズレがあるので含めていません。

BBCはイギリス英語、その他は基本的にアメリカ英語ですが、色々なアクセントを聞くことはよい訓練になるので、併用するのがおすすめです。

企業法務弁護士の留学事情③ 米国司法試験編

私はアメリカのロースクールを卒業した後、ニューヨーク州の司法試験(NY Bar Exam)を受験し合格しました。そのため、アメリカの司法試験制度についてある程度の知識と経験を有しています。

そこで、今回はアメリカの司法試験について書きたいと思います。

 

なお、本記事は古い情報や誤った情報を含んでいる可能性があります。実際にアメリカの司法試験を受ける予定の方は、ご自分で最新の情報を確認することを強くお勧めします。

 

■ アメリカの司法試験制度の概要

 

アメリカの弁護士資格は、州ごとに分かれています。例えばカリフォルニア州で弁護士資格を取ったとしても、ニューヨーク州で弁護士活動を行うことは原則として認められません。

そのため、司法試験(Bar Exam)についても州ごとに制度が異なっています。

 

もっとも、多くの州は統一司法試験であるUBE(Uniform Bar Examination)を採用しています。本記事の執筆日現在、全米50州のうち40州がUBEを採用しています(NY州もUBEを採用しています。CA州は不採用)。

UBEを採用している州の場合、受験資格や合格最低点に違いはあるものの、試験問題は共通になります。また、UBEは毎年2月と7月の2回実施されます。

 

さらに具体的には、UBEは以下の3つのパートに分かれています。

  • 択一式試験であるMBE(Multistate Bar Examination)
  • 論文式試験であるMEE(Multistate Essay Examination)
  • 準備書面などの実務的な書面を起案するMPT(Multistate Performance Test)

400点満点で、配点はMBEが200点(50%)、MEEが120点(30%)、MPTが80点(20%)です。ニューヨーク州の場合、266点(66.5%)が合格最低点とされています。

 

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日本人に2番目に人気のカリフォルニア州の場合、UBEを採用していませんので、本記事はあまり参考にならないかもしれません。他に参考になるブログが沢山あるのでそちらをご参照ください。ご参考までに1つURLを貼らせていただきます(非常に優秀な弁護士の方が書いた合格体験記です)。

https://note.com/kaeiro/n/n96da9c74123d

 

■ 司法試験受験のモデルスケジュール

 

典型的な日本人LLM留学生の司法試験受験スケジュールは、以下のようなものだと思います。

  • 8月にLLMに入学
  • 11月にMPRE受験
  • 翌年の3月頃から日本人ノートを読み始める
  • 5月にLLMを卒業。MBEの本格的な勉強を開始
  • 6月末ごろにMBEの勉強をおおむね完了。MEEの勉強を開始
  • 余裕があれば7月中旬にMPTの勉強をする
  • 7月末に司法試験を受験

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■ 受験資格について 

 

アメリカの多くの州では、アメリカのロースクールの3年コース(JD)を卒業しなければ司法試験を受けることができません。しかし、ニューヨーク州などの一部の州では、①外国で法律を勉強した人であり、かつ②アメリカのロースクールの1年コース(LLM)を卒業した人にも受験資格を認めています。イリノイ州など、LLM卒業のほかに外国の弁護士であることを求める州もあります。)

 

ニューヨーク州の場合、日本の学校の成績証明書や弁護士登録証明書を送って受験資格があることを確認してもらわなければなりません。これには時間がかかるため、早めに対応する必要があります。

 

また、以前の記事でも書いたとおり、カリフォルニア州については、外国の弁護士資格を有している人であれば司法試験を受けることができます。

したがって、日本の弁護士であれば、アメリカのロースクールを卒業しなくてもカリフォルニア州の司法試験を受けることができます。

 

■ MBEとMEEの試験科目

 

MBEの試験科目は、以下の7科目です。

①      民事訴訟法(Civil Procedure)

②      憲法(Constitutional Law)

③      契約法(Contracts)

④      刑法および刑事訴訟法(Criminal Law and Procedure)

⑤      証拠法(Evidence)

⑥      不動産法(Real Property)

⑦      不法行為法(Torts)

 

MBEは、6時間で400問を解く過酷な試験です。例年は3時間200問×2でした。2021年2月の試験は新型コロナウイルスの影響でリモート試験となったため、90分100問×4で行われたそうです。

 

MEEの試験科目には、MBE科目である上記7科目に加えて、以下の6科目が含まれます。

①      代理法およびパートナーシップ法(Agency and Partnership)

②      株式会社法および有限責任会社法(Corporations and Limited Liability Companies)

③      抵触法(Conflict Laws)

④      家族法(Family Law)

⑤      担保物権法(Secured Transactions)

⑥      信託法および遺言法(Trusts and Estates)

 

MEEは、3時間6問の論文式試験です。基本的には13科目のうち6科目のみが出題されますが、たまに複数科目にわたる複合問題が出題されることがあります。2021年2月の試験は新型コロナウイルスの影響でリモート試験となったため、90分3問×2で行われたそうです。

 

科目と試験の配点を見ると分かると思いますが、単純計算で、MBE科目の7科目は配点全体の約66%(MBEの配点50%+MEEの配点30%のうち7/13)を占めています。したがって、MBE科目の勉強が最も重要になります。

 

■ MPTについて

 

MPTは、架空の事例を題材として、与えられた裁判例や法令をもとに、リサーチメモや準備書面などを起案する試験です。日本の司法研修所の試験に似ています。3時間で2問を解く必要があります。

問題の性質上、対策が難しいといわれています。もっとも、日本の実務家であれば何となくメモや準備書面のイメージはできるため、対策しなくてもそれなりの答案が書けることもあります。実際、まったくMPTの勉強をしないままUBEに合格する人も沢山います。

 

■ アメリカの司法試験(UBE)の難易度

 

アメリカの司法試験は、日本の司法試験ほど難しくないと言われています日本の法律家であれば、合格に必要な勉強期間は2か月半程度と言われています。

上記のとおり、ニューヨーク州であれば合格最低点が266点なので、MBEで160点とれば、MEEとMPTが合計106点でも合格できます。MEEとMPTは知識が足りなくても頑張ってそれっぽく作文すれば120点ぐらい取れるようです。

 

ただし、アメリカの司法試験の難易度は、受験者の英語力と日本法に関する知識の多寡に大きく左右されます。

 

アメリカの司法試験で大変なのは、まず何と言っても、試験も勉強もすべて英語だという点です。

私は英語力が高い方ではなかったので、最初のうちは問題を時間内に解ききることが難しかったですし、問題文の読み間違えも多かったです。問題を解いた後に解説を読むのにすら、かなりの時間がかかりました。

また、MEEについては、分かっていても英語の表現が思いつかず、無駄に時間を使うことが多々ありました。

これらの点については、英語力が高い人であればそれほど苦にならないのかもしれません。

 

また、UBE科目の中には、日本の司法試験科目と似ている科目が少なくありません。

憲法はそっくりですし、刑法、刑事訴訟法会社法などもよく似ています。民事訴訟法や証拠法などは違う部分も大きいですが、日本法の知識を流用できる部分が少なからずあります。そのため、日本の司法試験合格者であれば、そうでない人と比べてかなり勉強が楽になると思います。

 

上記のとおり、日本の法律家であれば2か月半ぐらい(LLM卒業後~)の勉強で合格できるといわれており、私も実感としてその意見に同意ですが、そのスケジュールだとあまり余裕はないですし、実際にはそれよりも早く勉強を始めている人の方が多数派だと思います。

 

■ 勉強法

 

私がした勉強は以下のとおりでした。点数はうろおぼえですが、たしか合計305点ぐらいで、MBEが160点ぐらいでした(悪くないスコアです)。なお、受験したのはそれほど昔ではありません。そのため、これから受験する人にとっても参考程度にはなると思います。

 

MBE

  • 7科目について、過去の日本人留学生が作成したノート(いわゆる日本人ノート)を2回程度通読する。
  • Emanuelという問題集を解く(民事訴訟法を除く)
  • Adaptibarというオンラインの問題集で、問題を1000問ぐらい解く
  • 受験予備校(barbri)の模試を時間を計って解いて、復習する
  • 民事訴訟法について、試験委員会(NCBE)が公表しているサンプル問題10問を解く

日本人ノートというのは、歴代の日本人LLM留学生が作成した勉強用ノートです。いろんな人が好き勝手に改訂していることもあって非常に読みにくいですが(失礼)、振り返ってみると、必要十分な情報が記載された良い教材だったと思います。

Emanuelに掲載されている問題は基本的には過去問で、Adaptibarにも含まれています。そのため、問題集はAdaptibarだけでも足りると思います。

間違えた問題は、日本人ノートも見直しつつ、翌日や数日後に再確認していました。似たような問題が繰り返し出題されているので、間違えた問題や自信のない問題をしっかり復習するのが大事だなと思った記憶です。

 

MEE

  • 全科目*について、Smart Bar Prepという教材のアウトラインを読む
  • 受験予備校(barbri)のMEE問題集(過去問集)の基本問題の方をすべて*解き、自信のない論点については論証を固めておく

*1つ前の試験で出た科目は出ないと考えて、3科目ぐらいはほぼノータッチでした。

MEEの過去問は、初見ではほとんど分からない問題も多かったです。そのような問題は、問題文を読む⇒何となく回答を想像する⇒すぐに参考答案を見て知らない論点を覚える、という形でどんどん進めていきました。

 

MPT

  • 1問のみ、時間を計って問題文を読む

MBEとMEEの勉強で手一杯で、MPTについてはほとんど勉強できませんでした。本番は時間配分など大きく失敗した記憶です。当然ですが、余裕があればMPTも対策すべきだと思います。

 

最近の受験生が作成した合格体験記も一読しましたが、私の勉強法は今でも割と主流なようです。

MBEについて、①日本人ノートと②Adaptibar

MEEについて、①Smart Bar Prepなどの論証集と②Barbriの問題集(過去問)

さえしっかりやっておけば、MPTについてはノータッチでも、合格最低点には届くと思います。

 

なお、MBEのBarbri模試は本番と傾向が大きく異なっており、別にやる必要なかったなと思った記憶があります(重箱の隅をつつくような問題だった記憶です)。また、MEEの過去問や合格者答案もネットで公表されています。

そのため、高い料金を払ってbarbriを利用することは必須ではないと思います。

 

■ NY州の弁護士登録要件について

 

ニューヨーク州の場合、弁護士として登録するためには、司法試験(UBE)で266点以上を取ることに加えて、以下の2つの要件を満たす必要があります(他にも要件がありますが割愛します)。

  • 法曹倫理に関する試験であるMPRE(Multistate Professional Responsibility Examination)で、150点満点中85点以上を取ること
  • ニューヨーク州法に関する講義であるNYLC(New York Law Course)を受講し、その後にニューヨーク州法に関する試験であるNYLE(New York Law Exam)で50問中30問以上正答すること

 

MPREは毎年3月、8月、11月の3回実施されます。2時間60問の択一式試験で、ニューヨーク州の場合は150点満点中85点以上で合格となります(CA州は86点合格)。

難易度は受験者の事前知識や英語力に大きく左右されますが、日本の法曹資格を持っている人の場合、合格に必要な勉強期間は1週間から2週間と言われています。それほど難しい試験ではありません。

私は受験予備校(barbri)が無料で配っている教材を使って、試験2週間前から勉強しました。

もちろん、油断して勉強せずに受けると必要なスコアをとれないこともあります。私の友人の中にも再受験している人が何人かいました。

 

NYLEは手元の資料を見ながら受けてもいい試験(いわゆるOpen-Book Exam)なので、NYLCを受講してから受ければまず落ちることはないと思います。

企業法務弁護士の留学事情② 留学準備編

私はアメリカのロースクール(LLM)に留学した経験があります。もっとも、MBAやイギリスのロースクールのことはよくわかりません。

そこで、今回はアメリカのロースクールへの留学準備について書いてみたいと思います。

 

なお、この記事には古い情報や不正確な情報が含まれている可能性があります。特に、新型コロナウイルスの影響により手続きに大きな変更が加わっているかもしれません。留学を検討されている方は、ご自分で最新の情報を確認することを強くお勧めします。

 

■ 留学するために必要な手続き

出願先の大学にもよりますが、アメリカのロースクールに留学するために必要の手続き等は、おおむね以下のとおりです。

 

【留学する前年の10月頃まで】

  • LSAC(Law School Admission Council)のウェブサイトでアカウントを作る
  • 大学の教授、司法研修所の教官、または職場の上司等から、推薦状(Letter of Recommendation(LOR))を2通から3通取得する(推薦者からLSACに直接メールで提出してもらう。アカデミック関係者から1通、職場関係者から1通の合計2通取得することを求められることが多い)
  • 出身大学、大学院、司法研修所の成績表を、LSACに直送してもらう(成績表を米国式に評価しなおしてもらうサービスを利用する必要がある。この再評価にかなり時間がかかるので、この手続きだけでも早めに済ませた方がいい

 

【留学する前年の12月頃まで】

  • TOEFLまたはIELTSで必要なスコアを取得する(LSACまたは志望校に直送)
  • レジュメ(ResumeまたはCV)を作成する
  • パーソナルステートメント(Personal Statement(PS))を作成する(パーソナルステートメントとは、自分の経歴や志望動機に関するエッセーのこと)
  • LSACのウェブサイトを通じて、志望校に①TOEFLまたはIELTSのスコア、②レジュメ、③パーソナルステートメント、④推薦状、および⑤出身大学等の成績表を提出する。

 

【留学する年の6月頃まで】

  • 大学から合格通知が送られてきた後、入学手続きをする(入学金の納付など)
  • 大学からI-20という書面が送られてきた後、ビザの申請をする
  • 米国大使館までビザの面談に行く。2週間後ぐらいにビザが郵送で送られてくる

 

【渡米直前】

  • 渡米後の滞在先を確保する(しばらくホテルやAirBnBを利用するのも可能)
  • アメリカに荷物を送る場合にはその手続きを済ませる(ヤマト運輸や日通にお願いすることが多い。船便だと1,2か月かかるので早めに済ませた方がいい)
  • 航空券の手配
  • 職場の引継ぎを済ませる(これをちゃんとやらないやつは許さん)
  • 市区町村で海外転出届を出す
  • 銀行や保険などの連絡先変更を済ませる
  • 大学から要求される予防接種を済ませる(実際には、渡米後に大学で接種することも可能な場合が多いらしい。その場合にはアメリカの保険が適用されて無料になるのが普通なので、そっちの方がお得かもしれない。日本で打つと数万円かかる)
  • 必要な保険に加入する(本人は大学指定の保険に加入するのが通常だが、配偶者や子供は日本で海外旅行保険に入っていくことが多い)

 

【渡米前にやっておくといいこと】

  • 国際運転免許証の取得
  • NY Barの受験資格があることを確認してもらうため、New York State Board of Law Examinersに大学や司法研修所の成績証明書、弁護士会の所属証明書等を送っておく。渡米後でも対応可能だが、誰かに手伝ってもらわないといけなくなる

 

出願期限は、大学によって異なります。ハーバードなどのトップ校の場合、留学する年の前年の12月1日などに出願期限が設定されています。ランキングで10位~20位ぐらいの大学になると、留学年の2月から4月ぐらいまでに出願期限が設定されていることが多いです。

もっとも、各大学のホームページには、合格者が定員に達した段階で出願受付を締め切ると記載されている場合がほとんどです。また、あまり出願を先延ばしにすると精神衛生上よくありません。そのため、志望校の出願期限が遅めに設定されているとしても、前年中には出願を終えられるように準備するのがいいと思います。

 

*保険は、医療保険のほか、第三者賠償責任保険(JALのアンブレラ保険など)に日本で入っていく人も多いです。アメリカの場合は賠償額がとんでもない金額になる可能性があるため。

 

*LSACのウェブサイトは、最初は使い方がよくわからず苦労すると思いますが、頑張って操作しているうちにだんだん使い方が分かってきます。

 

*留学する場合、通常はJ1ビザという学生ビザを取得します(配偶者や子供はJ2ビザ)

 

*家探しは、①大学の寮に入る、②日本にいる間にオンラインで契約していく、③最初は現地のホテルに滞在して直接見て決める、の3通りがあります。③の手段をとる場合、日系の不動産エージェントを使うと高いので、現地の不動産エージェントを使うか、不動産紹介サイトなどを使いつつ自分の足で探した方がいいと思います。アメリカの賃貸は大家側も外国人に慣れていることが多いので、つたない英語でもなんとかなります。

 

■ TOEFLについて

TOEFLのスコアは2年前のものから受け付けてくれるのが通常です。また、人によっては必要なスコアを取得するのにかなりの期間が必要になります。忙しく働きながら英語の勉強をするのは、想像以上に大変です。案件の都合や身内の体調不良などにより、勉強できない期間が生じる可能性もあります。

そのため、留学する予定の人は早めにTOEFLを受験してみて、自分がどれぐらい点数をとれるのかを把握し、必要な場合には早めに勉強を開始することをお勧めします。

 

■ 志望校の選択について

志望校は、ランキングと立地のみを考慮して決める場合がほとんどです。

例えば、場所がどこでもよければ、単純にランキングが上の大学から順番に志望する人がほとんどだと思います。

西海岸の開放的な雰囲気が好きなのであれば、UCバークレーなどが第一志望になることもあると思います(どうしてもロサンゼルスに行きたくてUCLAやUSCを志望する人もいます)。

一方、東海岸の格式高い雰囲気が好きなのであれば、ヴァージニアやコーネルが第一志望になる人もいるかもしれません(東海岸には名門校がたくさんあります)。

ハワイやサンディエゴの大学を選ぶ不届き者(失礼)もいるそうです。

 

一方で、中には自分の専門分野に関する有名な教授がいるという理由で志望校を選択する人もいます。例えば、マイアミ大学のランキングはそれほど高くありませんが、国際仲裁に関するプログラムが有名であるため、留学先として選ぶ弁護士もいます。

企業法務弁護士の留学事情①

一定以上の規模の弁護士事務所に所属している弁護士のなかには、入所して3年目から7年目ぐらいまでの間に、事務所の援助を得て留学する人が少なくありません。例えば五大法律事務所であれば、本人が希望すれば基本的には留学に行かせてもらえると思います。

 

私もアメリカのロースクールへの留学を経験しましたので、留学について多少の知識と経験があります。そこで、今回は企業法務弁護士の留学事情について書きたいと思います。

なお、古い情報や不正確な情報が含まれているかもしれませんのでご留意ください。

 

  • 留学先

留学先として圧倒的に人気なのはアメリカのロースクール法科大学院ですが、イギリスのロースクールに行く人もある程度います。また、アメリカやイギリスのMBA(経営大学院)に留学する人もいますし、稀にその他の国の大学院に留学する人もいます。

 

アメリカやイギリスのロースクールには3年コース(JD)と1年コース(LLM)があります。LLMは海外ですでに法律を勉強した人向けのコースです。そのため、弁護士が留学する場合にはLLMに留学するのが通常です。

 

アメリカのロースクールに留学することのメリットの1つは、卒業後にアメリカの一部の州の司法試験を受験できることです(一番人気なのはNY州の司法試験です)。

ただし、カリフォルニア州の司法試験は、日本の弁護士であればアメリカのロースクールを卒業しなくても受けることができます。そのため、アメリカ留学に明確な優位性があるのかは怪しいです。多くの弁護士が留学しているため情報を集めやすいというのはあると思います。

 

現在では、「アメリカ(イギリス)のロースクールに留学した」という事実のみでは他の弁護士と差別化することが難しいため、MBAに留学する人や、あえて留学しないことを選択する人も増えてきている印象があります。

 

  • 留学費用

アメリカのロースクールに留学する場合、学費だけで700万円ぐらいかかるのが通常です。例えばハーバード大学LLMの場合、2021年の学費は6万7720ドル(1ドル=110円計算で、744万9200円!)とされています。

それに加えて保険料や生活コストもかかります(東西海岸は家賃も高いです)。LLMが始まる前にサマースクールに参加する場合には、その費用も必要になります。

地域にもよりますが、学費とその他の費用を合わせて、1年間で1千万円以上が必要になることが多いと思います。

 

イギリスのロースクールの場合、アメリカのロースクールよりも学費が大幅に安いことが通常です。例えばUniversity College LondonのLLMの場合、2021年の学費は2万8500ポンド(1ポンド=153円計算で、436万500円)とされています。

 

弁護士が留学する場合、所属事務所がどれぐらい経済的な援助をしてくれるかは事務所によります。例えば四大法律事務所の場合には、700万円ぐらいの固定額のみが支給されるそうです。そのため、学費の安いイギリスに留学すれば、経済的にかなり楽になると思います。

アメリカの弁護士資格を取りたければ、イギリスのLLM卒業後にカリフォルニア州の司法試験を受けることもできます。

 

一方、学費をすべて払ってくれる事務所もあります。その場合には、アメリカに留学することの負担はかなり軽減されると思います。

 

  • LLM留学に必要な英語力

どれぐらいの英語力が要求されるかは、留学先の大学によって異なります。英語力を証明するための資料は、基本的にはTOEFLかIELTSのいずれかです。

 

アメリカの大学でいうと、ハーバードやスタンフォードといったトップ校のLLMに留学するためには、TOEFLで120点満点中115点近くが必要になると言われています。帰国子女ではない日本人にとって、この点数を取るのは至難の業です。人によっては日本の司法試験に合格するよりも難しいと思います。

 

それ以外の学校であっても、U.S. Newsが公表しているロースクールランキングのトップ20に入るような大学の場合には、TOEFLで90点台後半から105点程度を要求されることがほとんどです。

そのため、私の知る限り、アメリカへの留学の場合にはTOEFLで100点前後をとって留学する弁護士が多いです。

 

もっとも、大学によっては、日本で経験を積んだ弁護士や企業の法務担当者であれば、英語の点数がある程度低くても入学を許可してくれる場合があります。英語が苦手であっても諦めずに応募すれば、意外にも合格できることも少なくないようです。

私の知り合いの中には、TOEFL 80点台でTOP14に入るような大学に合格した弁護士もいます。

 

TOEFLで100点を取るのは多くの日本人にとってかなり大変です。人によっては1年以上の勉強期間が必要になります。

もっとも、TOEFLはリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4つのセクションに分かれており、それぞれに同じ配点(30点)があるため、英語を流ちょうに話せなくても100点を取ることはできます。そのため、TOEFLで高得点を取っていても英語を話すのは苦手という人は少なくありません。

 

英語が得意な状態で留学するのと苦手なまま留学するのでは、得られるものが非常に大きく違います。留学する以上、志望校にかかわらず全力で英語を勉強しておくことを強くお勧めします

 

  • 留学後の研修

 LLMの卒業後は、英語圏の法律事務所で10か月~1年間ほど研修するのが人気です。

もっとも、以下の理由等から、近年では海外の法律事務所で研修しない弁護士も増えてきています。

  • 海外の法律事務所で研修しても他の弁護士と差別化することが難しくなってきたこと
  • 海外の法律事務所での研修よりも日本で実務に従事していた方が学ぶことが多い場合があること
  • 日本人を研修生として採用してくれる法律事務所が減ってきたこと

私の友人の中にも、LLM卒業後すぐに帰国して官庁や企業に出向することを選んだ弁護士が何人かいます。