マスクの転売でついに逮捕者が!
2020年6月1日に、マスクの転売による初の逮捕者が出ました。
「マスク1万6000枚転売の疑い 高松の会社社長を逮捕 全国初」(NHK News Web)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200601/k10012454001000.html
マスク1万6000枚を1枚当たり約5円上乗せした価格で転売した容疑とのことですが、このニュースに対し、
・「たった5円上乗せしただけで逮捕されちゃうの?」
・「これぐらいは不当な高額転売には当たらないんじゃない?」
といった意見が散見されました。
しかし、大まかにいうと、法令は以下のようなマスクの転売を禁止しています。
- スーパー、ドラッグストア、ネット通販など、相手を選ばずに販売している人から購入したマスクを、
- 不特定または多数の人に対して、
- 購入時より少しでも高い値段で売却する行為
そのため、仮に1枚当たり5円しか上乗せしていないとしても、相手を選ばずに販売している人からマスクを購入し、そのマスクを不特定または多数の人に対し売却したのであれば、法令に違反することになるわけです。
そして、今回逮捕されたのはクリーニング会社の役員で、輸入販売業者から購入したマスクを販売していたということですが、通常、輸入販売業者がクリーニング会社の役員を個別に選んでマスクを販売することはありません。そのため、この輸入販売業者は、相手を選ばずに誰彼構わずマスクを販売していたのでしょう。
したがって、今回の行為は法令に違反する可能性が高いため、手続的な違反がない限り、逮捕に問題はないと考えられます。
なお、スーパーやドラッグストアなどが、通常の取引ルートでマスクを仕入れて販売している場合、仕入先は相手を選んで販売している業者(卸売業者など)であることが通常なので、法令には違反しません。法令は、普通の小売業者まで法令に違反することになってしまわないよう、きちんと配慮しているのです。
以下、ご参考までに詳しく記載しておきます。
1 どの法律でマスクの転売が禁止されているのか?
マスクの転売は、「国民生活緊急措置法」と「国民生活安定緊急措置法施行令」によって、2020年3月15日から禁止されています。
コロナ禍でマスクの不足や転売が社会問題になったことをうけて、政府は施行令を改正し、マスクの転売を禁止しました。
これに違反してマスクを転売した場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方を課されるおそれがあります。
2 どれぐらいの利益を上乗せすると違反になるのか?
禁止されているのは、「購入価格を超える価格」でマスクを転売する行為です。つまり、購入価格よりも0.1円でも高く転売すれば、法令に違反することになります。
「購入価格」には、消費税や送料等を含みます。そのため、例えば、購入価格が1000円(消費税80円)で、購入時に送料として100円を支払った場合には、1180円以内で転売すれば、法令には違反しないことになります。
転売時については、転売価格と送料等の合計額が「購入価格」を超える場合であっても、転売価格が「購入価格」以下であり、かつ、送料等が一般的な範囲の金額である限り、法令には違反しません。しかし、送料等が一般的な金額に比べて明らかに過大であるときは、法令に違反します(厚生省ほか『国民生活安定緊急措置法による転売規制についてのQ&A』Q5-6)。
3 禁止されるマスクの「転売」とは?
禁止されるマスクの「転売」とは、「不特定の相手方に対し売り渡す者」から購入したマスクを、不特定または多数の人に対して販売する行為のことをいいます。
要するに、スーパー、ドラッグストア、ネット通販など、相手を選ばずに販売している人からマスクを購入し、それを不特定多数の人に販売する行為が「転売」に当たるということです。
そして、小売業者や卸売業者などが、通常の商取引において製造業者や輸入業者から仕入れたマスクを販売する行為は、「転売」には当たらず、規制の対象外です。
なぜなら、通常の商取引では、製造業者や輸入業者は、相手方を特定して製品の販売を行っていると考えられるからです(上記Q&AのQ4-1参照)。
ただし、製造業者や輸入事業者が相手を選ばずにマスクを販売していた場合(ネットで売っていた場合や誰彼構わず声をかけて売っていた場合など)には、そこから仕入れたマスクを不特定多数の人に販売する行為は「転売」に当たり、規制対象となります(上記Q&AのQ4-1およびQ4-3参照)。