五大法律事務所とは

日本には「五大法律事務所」と呼ばれる超大手法律事務所があります。それは、

 

① 西村あさひ法律事務所

② アンダーソン・毛利・友常法律事務所

③ 長島・大野・常松法律事務所

④ 森・濱田松本法律事務所

⑤ TMI総合法律事務所

 

の5つです。

 

数年前まではTMIを除く4つを「四大法律事務所」と呼ぶことの方が多かったですが、TMIが弁護士数でも取り扱い分野でも四大とそん色なくなってきたので、最近はTMIを入れて「五大法律事務所」と呼ぶことも多くなりました(ただし、TMIを除く4つを四大法律事務所と呼ぶことは今でも多いです)。

 

私はかつて五大法律事務所の1つに所属していましたし、他の五大に所属している(または所属していた)友人もたくさんいるため、五大の内部事情をある程度知っています。そして、外から見る限りでは五大はどれも似たり寄ったりに見えますが、内部事情を知る者からすると結構違いがあります。

 

そこで、各事務所の共通点と個別の特徴を、私の知る限りでまとめていきたいと思います。

古い情報や正確ではない情報の可能性もありますし、私の個人的意見も含んでいますのでご注意ください。

 

共通点

 

⑴ 所属弁護士が多い

 

五大と言われるだけあって、所属弁護士数が他の法律事務所と比べてめちゃめちゃ多いです。ジュリナビの「2019年全国法律事務所ランキング200」によれば、2019年1月時点の所属弁護士数は、

 

  • 西村あさひ 565人
  • アンダーソン 467人
  • 長島 458人
  • 森濱田 413人
  • TMI 428人

 

と、いずれも400人を超えています。6位のべリーベスト法律事務所が178人なので、五大法律事務所の規模が業界においていかに突出しているかが分かると思います。

 

⑵ 採用人数が多い

 

所属する弁護士が多いから当然ではありますが、五大法律事務所は採用する弁護士の数も他の事務所と比べて圧倒的に多いです。例えば、2019年12月または2020年1月には、

 

  • 西村あさひが53人
  • アンダーソンが37人
  • 長島が38人
  • 森濱田が51人
  • TMIが35人

 

の新人弁護士を採用しています。日本で20番目に大きい法律事務所である「牛島総合法律事務所」の所属弁護士が51人(2019年1月時点)であり、西村あさひと森濱田は新人弁護士だけでもこれと同等以上の規模になるわけです。

 

採用人数は毎年異なりますし、景気によっても左右されます。リーマンショック後には15人前後しか採用していないこともありました。もっとも、ここ数年は景気もよく、どの事務所も拡大傾向にあったようです。

 

ただし、コロナウイルスの影響で今後数年間は採用人数が減少する可能性もあります。

 

⑶ 取扱い分野が広い

 

医者の専門が外科医、内科医、麻酔科医といったように分かれているのと同じで、弁護士にも得意分野・不得意分野があります。そして、中小規模の弁護士事務所の場合、所属弁護士の中にその分野を得意とする人がいない場合には、その分野の案件を事務所としてこなすことができない場合があります(特に、税務やファイナンスといった専門性の高い分野についてはその可能性が高いです)。

 

また、案件によっては、要求される作業量が非常に多く、中小規模の事務所ではマンパワー的にこなすことが難しい場合もあります。

 

しかし、五大法律事務所の場合、400人以上も弁護士が所属しているだけあり、基本的にすべての分野に対応できるだけの専門性とマンパワーを有しています。このように、1つの事務所であらゆる案件をこなすことができる(いわゆるワンストップサービスを提供できる)というのは、五大の特徴だと思います。

 

⑷ 給料が高い

 

五大法律事務所の初任給は、いずれも1000万円を超えています。これは他の一般的な法律事務所と比べてかなりの高水準です。また、五大法律事務所に入る新人弁護士の多くが20代半ばであることを考えると、一般的な日系企業とくらべてもかなりの高水準ではないでしょうか。

 

また、事務所によっては、3年目か4年目で年収が2000万円を超える場合もあります。五大のうちの1つに所属する私の友人は、4年目で2500万円ぐらい稼いでいました。

 

⑸ 採用決定時期が早い

 

五大法律事務所の採用活動は、司法試験が終了してすぐの6月1日あたりから始まり、司法試験の合格発表よりも前に終わります。つまり、司法試験に合格しているか分からないうちに採用活動が行われます。

 

そのため、採用の際には司法試験の成績は考慮されず、出身大学・大学院やそこでの成績(予備試験合格者であればその成績も)が重視されます。

 

⑹ 入るのが難しい

 

業界でも高い評判を誇り給料も高いので、五大法律事務所は就活生の間で非常に人気です。そのため、いい大学・大学院をいい成績で卒業し、早期に司法試験に合格しないと、入るのは難しいと言われています(もちろん例外はあります。語学堪能とか、もともと企業で働いていて特定の分野に詳しいなどの特殊技能があれば、出身大学や成績にかかわらず入れることもあります)。

 

ただ、近年は五大の採用人数が非常に多いので、採用人数が少ない時期と比べれば入るのは簡単になったとも言われています(5つ合わせれば214人も入っているので)。中途採用を積極的に行っている事務所もあるようです。

 

そのため、近年は人気のある中小規模の事務所に入る方が難しかったのかもしれません。もっとも、コロナウイルスの影響で今後採用人数が減った場合には、入るのが今より難しくなるとは思います。

 

⑺ めちゃめちゃ忙しい

 

五大法律事務所は、どこも激務で有名です。特にアソシエイトのうちは、朝10時に出勤し、そのまま次の日の朝5時まで働くということもそれほど珍しくはありません(私も経験があります)。5日間連続で深夜2時、3時まで働くこともあります。また、土日のいずれかは基本的に働きます。

冗談で「五大の弁護士の勤務時間は9時-5時(朝9時から翌朝5時まで)である」などと言うことがありますが、これも完全な冗談とは言えないわけです。

 

五大のアソシエイトは、最初の頃は夜遅くから飲み会をして忙しい自慢をし合ったりしますが、段々と忙しいことのつらさを実感して、そんなことはしなくなります。

 

また、その忙しさゆえ、最初からいつかは辞める前提で入所する人が多いことも五大の特徴だと思います。五大は日本最高峰の法律事務所であるにもかかわらず、同僚がインハウス(企業内弁護士)や中規模事務所に転職する際には、「うらやましい」という感想を抱く人が多いというぐらいです。

 

そのため、体力に自信のある人でないと、生き残るのは難しいかもしれません。

 

次回は、各事務所の特徴について書きたいと思います。