企業法務弁護士の留学事情② 留学準備編

私はアメリカのロースクール(LLM)に留学した経験があります。もっとも、MBAやイギリスのロースクールのことはよくわかりません。

そこで、今回はアメリカのロースクールへの留学準備について書いてみたいと思います。

 

なお、この記事には古い情報や不正確な情報が含まれている可能性があります。特に、新型コロナウイルスの影響により手続きに大きな変更が加わっているかもしれません。留学を検討されている方は、ご自分で最新の情報を確認することを強くお勧めします。

 

■ 留学するために必要な手続き

出願先の大学にもよりますが、アメリカのロースクールに留学するために必要の手続き等は、おおむね以下のとおりです。

 

【留学する前年の10月頃まで】

  • LSAC(Law School Admission Council)のウェブサイトでアカウントを作る
  • 大学の教授、司法研修所の教官、または職場の上司等から、推薦状(Letter of Recommendation(LOR))を2通から3通取得する(推薦者からLSACに直接メールで提出してもらう。アカデミック関係者から1通、職場関係者から1通の合計2通取得することを求められることが多い)
  • 出身大学、大学院、司法研修所の成績表を、LSACに直送してもらう(成績表を米国式に評価しなおしてもらうサービスを利用する必要がある。この再評価にかなり時間がかかるので、この手続きだけでも早めに済ませた方がいい

 

【留学する前年の12月頃まで】

  • TOEFLまたはIELTSで必要なスコアを取得する(LSACまたは志望校に直送)
  • レジュメ(ResumeまたはCV)を作成する
  • パーソナルステートメント(Personal Statement(PS))を作成する(パーソナルステートメントとは、自分の経歴や志望動機に関するエッセーのこと)
  • LSACのウェブサイトを通じて、志望校に①TOEFLまたはIELTSのスコア、②レジュメ、③パーソナルステートメント、④推薦状、および⑤出身大学等の成績表を提出する。

 

【留学する年の6月頃まで】

  • 大学から合格通知が送られてきた後、入学手続きをする(入学金の納付など)
  • 大学からI-20という書面が送られてきた後、ビザの申請をする
  • 米国大使館までビザの面談に行く。2週間後ぐらいにビザが郵送で送られてくる

 

【渡米直前】

  • 渡米後の滞在先を確保する(しばらくホテルやAirBnBを利用するのも可能)
  • アメリカに荷物を送る場合にはその手続きを済ませる(ヤマト運輸や日通にお願いすることが多い。船便だと1,2か月かかるので早めに済ませた方がいい)
  • 航空券の手配
  • 職場の引継ぎを済ませる(これをちゃんとやらないやつは許さん)
  • 市区町村で海外転出届を出す
  • 銀行や保険などの連絡先変更を済ませる
  • 大学から要求される予防接種を済ませる(実際には、渡米後に大学で接種することも可能な場合が多いらしい。その場合にはアメリカの保険が適用されて無料になるのが普通なので、そっちの方がお得かもしれない。日本で打つと数万円かかる)
  • 必要な保険に加入する(本人は大学指定の保険に加入するのが通常だが、配偶者や子供は日本で海外旅行保険に入っていくことが多い)

 

【渡米前にやっておくといいこと】

  • 国際運転免許証の取得
  • NY Barの受験資格があることを確認してもらうため、New York State Board of Law Examinersに大学や司法研修所の成績証明書、弁護士会の所属証明書等を送っておく。渡米後でも対応可能だが、誰かに手伝ってもらわないといけなくなる

 

出願期限は、大学によって異なります。ハーバードなどのトップ校の場合、留学する年の前年の12月1日などに出願期限が設定されています。ランキングで10位~20位ぐらいの大学になると、留学年の2月から4月ぐらいまでに出願期限が設定されていることが多いです。

もっとも、各大学のホームページには、合格者が定員に達した段階で出願受付を締め切ると記載されている場合がほとんどです。また、あまり出願を先延ばしにすると精神衛生上よくありません。そのため、志望校の出願期限が遅めに設定されているとしても、前年中には出願を終えられるように準備するのがいいと思います。

 

*保険は、医療保険のほか、第三者賠償責任保険(JALのアンブレラ保険など)に日本で入っていく人も多いです。アメリカの場合は賠償額がとんでもない金額になる可能性があるため。

 

*LSACのウェブサイトは、最初は使い方がよくわからず苦労すると思いますが、頑張って操作しているうちにだんだん使い方が分かってきます。

 

*留学する場合、通常はJ1ビザという学生ビザを取得します(配偶者や子供はJ2ビザ)

 

*家探しは、①大学の寮に入る、②日本にいる間にオンラインで契約していく、③最初は現地のホテルに滞在して直接見て決める、の3通りがあります。③の手段をとる場合、日系の不動産エージェントを使うと高いので、現地の不動産エージェントを使うか、不動産紹介サイトなどを使いつつ自分の足で探した方がいいと思います。アメリカの賃貸は大家側も外国人に慣れていることが多いので、つたない英語でもなんとかなります。

 

■ TOEFLについて

TOEFLのスコアは2年前のものから受け付けてくれるのが通常です。また、人によっては必要なスコアを取得するのにかなりの期間が必要になります。忙しく働きながら英語の勉強をするのは、想像以上に大変です。案件の都合や身内の体調不良などにより、勉強できない期間が生じる可能性もあります。

そのため、留学する予定の人は早めにTOEFLを受験してみて、自分がどれぐらい点数をとれるのかを把握し、必要な場合には早めに勉強を開始することをお勧めします。

 

■ 志望校の選択について

志望校は、ランキングと立地のみを考慮して決める場合がほとんどです。

例えば、場所がどこでもよければ、単純にランキングが上の大学から順番に志望する人がほとんどだと思います。

西海岸の開放的な雰囲気が好きなのであれば、UCバークレーなどが第一志望になることもあると思います(どうしてもロサンゼルスに行きたくてUCLAやUSCを志望する人もいます)。

一方、東海岸の格式高い雰囲気が好きなのであれば、ヴァージニアやコーネルが第一志望になる人もいるかもしれません(東海岸には名門校がたくさんあります)。

ハワイやサンディエゴの大学を選ぶ不届き者(失礼)もいるそうです。

 

一方で、中には自分の専門分野に関する有名な教授がいるという理由で志望校を選択する人もいます。例えば、マイアミ大学のランキングはそれほど高くありませんが、国際仲裁に関するプログラムが有名であるため、留学先として選ぶ弁護士もいます。